2008年12月 独歩プロデュース 安保廣信追悼公演
【月賦】【ブラインドの視界】(作・安保廣信)のご案内 |
今年二度目の独歩プロデュース公演のご案内です。
2007年3月に逝去した劇作家・安保広信の追悼公演。
「月賦」と「ブラインドの視界」の二作品を取上げました。
二作品とも1967年に劇団世代で初演された力作。
「ブラインドの視界」は、その年の芸術祭奨励賞を受けました。
今回の上演では、40年以上前に書かれたこの戯曲の普遍的テーマを大切にしつつ、
今日の時代に、より作品を生かすべく改訂しております。
「月賦」は、中年の女と若い男の二人芝居。
昭和の真っただ中。東京の安アパート。
水商売風の女の部屋に、月賦集金人の若い男が訪れ…。
世代の異なる男女の深層心理を巧みに描いた短編ドラマ。
「ブラインドの視界」は、経済成長著しい1970年代の大都会・東京で、
弱肉強食社会を勝抜くべく闘う中企業貿易会社の社長室が舞台。
剛腕社長と、その信念と強さに惹かれ、ミスのない仕事を忠実にこなす女秘書。そして…。
戦争の時代を生きぬき、戦後を生きる人間たちの傷と欲と愛が、強かに描かれます!
《出演》
森 うたう |
山下 夕佳 |
津川 祝子 |
河原崎 建三 |
をはり 万造 |
小形 満 |
|
河原崎 貴 |
西村 剛 |
千葉 優輝 |
麦 人 |
|
|
|
追悼・安保廣信 麦 人(独歩)
安保廣信は、劇作のかたわらおよそ三十三年間、水道橋駅近くのビル一階で、《しろとくろと》という喫茶店のマスターとして、長い日々を過ごした。このコーヒースペースは、劇作では食えなかった安保廣信の生活拠点であったが、同時にその狭間、彼が作品を生むために苦悩し、創造への希望の灯りをともす空間でもあった。この店には、彼を慕い、数え切れぬほどの演劇・文学・音楽などに関わる人々が出入りし、芸術を、創造の夢を熱く語りあった。そして小規模ながら、さまざまな朗読や一人芝居、音楽などのライブがこの空間の中で催されたのである。
安保廣信には、例え無名でも、真摯に創造と取組む多くの表現者や芸術家に場を提供し、その喜怒哀楽を共にわかちあいたいという切なる願いと無償の心があった。その心に甘え、三十年余り我儘にお付合いし、何度も公演をさせていただいた者の一人が、オノレ・麦人である。
(私と安保廣信との付き合いは、彼の喫茶店でアルバイトをして以来、35年にも及ぶ。)
さて、安保廣信の人となりを語れば、語りつくせぬほどの思いが私にはあるのだが、この追悼公演の二作品を上演することで、自分はその思いの丈の一端を披瀝したい。
とりあげた二つの作品には、エネルギー満タン時代の劇作家・安保廣信の感情・苦悩・希望・挫折諸々がとぐろのように渦巻く。四十年前に書かれたものとは思えぬほど瑞々しく、構造もテーマも骨太である。今は亡き安保廣信に、しかしこの二作品の中で未だ生きつづける劇作家に、私は私なりの深い追悼の念をこめてこの舞台を創ろうと思う。
幸いプロデュース&演出として、考えられるベストの配役とスタッフがそろった。彼らと共に精一杯の創造力を発揮し、見応えのある舞台を、あの世の安保廣信まで届けたい。(敬称・略)
|
|
|
|
|
|