青年座「諸国を遍歴する騎士の物語」を駅前劇場で観劇。
荒野の一角につくられた「移動式簡易宿泊所」を舞台に、
奇妙でオソロシイドラマが次々展開する。
棺桶に片足を突ッこんどるヨボヨボ老騎士二人と、
その従者が二人。
強欲な宿泊所の親父と清純無垢な娘。
病人を求めるヤブ医者と看護婦、
死者を求める胡散臭い牧師。
かようなオモロイ登場人物たちの生臭い欲望と、
人生に厭いて古木となり、
未だ死ねずにいる老騎士二人との相反関係が面白い。
その二人の老騎士によって滑稽とも思える殺人が始まり、
結局みんな殺されたり自殺してしまう。
このチト現実離れした展開も、別役の手にかかると、
オソロシイ「リアリティー」をもって、
不思議な劇的輝きに満ちてくる。
「じゃ、どうして殺すんです…?」
「殺さないと、殺されるからね…。」
「やられてからでは遅いんだ…。」
「常に先手をとってきたんでよ、私たちは…。
先手必勝というやつさ…。」
こんなヤリトリを聞きながら、
イラク戦争や、米国の「力の政策」など、
オノレの生きとる今日の世界が重なってきたのは、
たぶんオノレだけではあるまい。
戯曲そのものはずいぶん前の作品だが、
その台詞は時代をこえて力強く息づいとる。
で、青年座の舞台は、
オノレの期待にそれなり応えてくれたしタメにもなった。
しかし不満もいくつかある。
全体に客を笑わせるコメディー調を意識して創ったのか、
その色が濃すぎて、
作品の深みを薄めちまったような気がする。
終始淡々と演じた森塚敏の老騎士が一番可笑しくリアルで、
(ホンマ、演技なのか、
元々こういう役者さんなのかわからんほど、
人生の機微・哀愁を感じさせる絶品の演技)
キャラクターを色濃く演じ過ぎた役者はさほど可笑しくなく、
かえって作品のリアリティーを削いどったような気がするナ。
生の演奏者が役者と共に舞台に出演、
イロイロとオモロイ音を出しておった。
音の効果としては悪くなかったと思う。
が、舞台の奥とはいえ、ハナッからケツまで、
役者より長く出演しているのである。
どうしてもチラホラ目がいってしまい、
ややジャマでウルサカッタ。
舞台もアレコレ飾りこみ過ぎて、
かえって荒野の寂寥感が失われとった。
やはり別役作品の多くは、
よりシンプルな舞台美術がベストではないか…、
オノレは改めてそう感じたな。
いずれにせよ、別役作品に首っ丈のオノレにとって、
観てソンはしなかった舞台ではアリマス。
オツカレサマ。