元大関・貴乃花が逝去。口腔底癌だという。
まだ55歳だというから若いよな。
オノレは子供の頃から大相撲ファンであった。
最初に好きになったのが千代ノ山。
筋肉質で突っ張り相撲一本の横綱だった。
自分の体が大きくないせいか、
小兵や痩身な相撲取りばかり応援していた。
その昔、キリギリスのようにノッポで、
キリギリスのように仕切る、
四つになったら折れッちまいそうなほど細い、
鳴門海なんてえ幕内力士がいて、
この人、オノレは大好きだったな。
で、小兵ながら大関にまでなった貴乃花の、
精一杯、苦しげな表情で戦う姿も好きであった。
しかしオノレが大相撲に強い歓心をよせたのも、
この貴乃花から千代の富士あたりまでだったような気がする。
千代の富士以後は年々興味が薄れ、
よほどヒマなときテレビ観戦しないでもないが、
今はたいていニュースの中で見るだけ。
二子山親方の息子、「若貴」時代の相撲人気にも、
それほど興味を感じなかった。
どうしてこんなに相撲への興味が薄れちまったんだろう…。
ハッキリとはわからんが、
たまにテレビで見る今の土俵では、
砂にしみた汗臭い匂いや、
出身地なり、その風土を想起させる力士の個性が薄い。
かつてオノレは、土俵に立つ力士たちから、
それぞれが生まれ育った「田舎の匂い」を強烈に感じたものだ。
兄の初代・若乃花も、貴乃花も、
青森や北海道の風土を力にして強くなったような気がしたし、
北の湖や千代富士なんてえのは北海道の代名詞の感さえあった。
今、朝青龍を頂点に外国人力士隆盛の時代だが、
彼らを見ていてもそれほど「お国柄」を感じないぜ。
すっかり日本に溶け込んで、
乱れた日本人より日本語がキチンとしていたりする。
そう、高見山・曙・武蔵丸…。
彼らにはシッカリ「ハワイ」を感じましたがネ。
角界のプリンスなんぞともてはやされた貴乃花であったが、
オノレにはプリンスなんてえ形容はあまりピンとこない。
一番一番粘りに粘り、死力をつくすあの細身の体には、
恐ろしく厳しい指導で貴乃花を育てた兄と同じに、
紛々と「田舎くさい」青森の風土がしみこんどった。
横綱の夢やぶれ、息子二人を横綱には成したが、
ここ四、五年は決して平穏の日々ではなかったらしい。
そして遂に「癌」という病魔と闘い、
刃折れ矢つき果てた小兵の名大関…。
合掌。