オノレ日記帳

2005年12月の記録



  ナガ〜イ正月休み
Date: 2005-12-26 (月)
 今年もあと一週間を切ッちまったな。
オノレの一年を振り返れば、
やはり忘れがたいいろいろなことがあった。
(年が明ければすぐ忘却するような気もするが)
 なかでも八月の独歩プロデュース公演「象」を、
苦労しつつも何とか無事に終えた経験は、
役者としてのオノレに多くの創造的実りをくれたと思う。
いまさらながら思い知らされた、オノレの演技の未熟。
観客と一期一会で終わってしまう生の舞台のオソロシサ。
etc…。
それでもこの創る悦びに満たされたオノレの思いは、
創る苦しみに喘ぐ思いを凌駕する。
 毎年、人さまの芝居を数々観ては、
勝手な感想をのたまうオノレではあるが、
それも可能な限りオノレの芝居創りの糧とせんがため。
満点にはほど遠い、オノレの創造的成果は重々承知の上である。
我ら凡人役者は、すぐれた多くの舞台や役者に学び、
オモロクない舞台や演技を反面教師に、
ひたすら茨の道を前へ前へと進まにゃならん。
だから来年も「ススムゾ!」。
 この暮れは昨日で仕事納め。
来年の仕事始めまでナガ〜イお休みになる。
ヤマノカミと相談し、彼女の故郷・青森へ行くことにした。
で、オノレ日記帳も本日からナガ〜イ正月休みとなる。
 皆々様、暮れから年明け、愉しい日々をお過ごしあれ!

  次世代を担う演劇人育成公演
Date: 2005-12-22 (木)
 午後一時過ぎ、小田急線・代々木八幡にある青年座劇場へ。
次世代を担う演劇人育成公演ということで、
「レインディア・エクスプレス」(作・成井豊)という芝居を、
青年座中心の若いエネルギッシュな役者たちが、
真摯に熱いハートで舞台創りをしとった。
そのハートと志しはヒシヒシと客席に伝わり、
オノレは好感をもって舞台を観た。
が、いかんせん戯曲の力が弱く、
彼らの熱き思いもやや空回り気味で、
オノレに深い劇的感動まではくれんかったな。
 終演後、この公演の中心となり頑張った役者、
五十嵐明君(彼は米TV映画シリーズ「ロスト」で、
オノレと共にレギュラーとして声の出演をしとる)や、
青年座のビチビチ女優さんたちと一緒に飲ませていただく。
若い彼らの情熱的話に巻き込まれ、
オノレも三十歳ほど若返り、チト飲み過ぎて頭がイタイ。

  兄弟考
Date: 2005-12-21 (水)
 オノレには二人の兄がいて、
長男の兄は九年ほど前、六十一歳で他界した。
オノレも今六十一歳。
そろそろ兄より長生きすることになる。
 ところで二人の兄をもった弟は、
どちらも「お兄ちゃん」と呼ぶことはできない。
そこでオノレの場合、次男の兄は名前の頭をつけて呼び、
どちらを呼んだかハッキリさせるための差別化をしとった。
それはいつの間にか、ごく自然にそうなったわけである。
で、当たり前のことではあるが、
長男は二人の弟の名を呼び捨てにするし、
次男は長男を「お兄ちゃん」と呼び、
弟の名を呼び捨てにする。
 さて次男の兄と、オノレのすぐ上の姉は未だ健在、
自分と同じシガナイ役者稼業をしとる。
そして六十過ぎた今でもオノレは本人たちを前にしたとき、
次男を名前の頭付で「○○ニイチャン」と呼び、
姉をただ「ネエチャン」と呼ぶ。
もちろん彼らも、未だにオノレの名前は呼び捨てである。
このチカラ関係は、
互いにこの地上から消滅するまで変わらんだろう。
 今朝の夢に、珍しく二人の兄があらわれ、
かようにつまらんどうでもいいことを、
ふと哲学的に考察したオノレであった。
 そういえば以前の日記で報告した「謎の女」が、
最近、オノレの夢にまったく出演しない。
謎の女は正体不明のまま、
「おぼろにウツクシク」、謎だけを残して消えちまったな。

  六十肩
Date: 2005-12-20 (火)
 一月ほど前から、
首筋・肩・上腕部につながる筋肉が相当痛む。
原因はパソコンにあるのかと思い、
しばらく打つのを控え目にしているのだが一向に治らん。
筋肉痛用塗布剤やスプレー消炎剤をしてもダメである。
 五十歳になった頃、
最初右腕が肩より上に上がらなくなり、
それが治ると今度は左肩が上がらなくなった。
いわゆる五十肩だろうと思い、痛みに耐えて放っといたら、
一年ほどで自然治癒したな。
で、たぶんこれも六十肩であろうと、
まことに安易に考えているのではあるが、
今回の場合、痛みはあっても、
両腕を頭の上までしっかり上げることができるのだ。
その症状が前と異なり、かえって不安になるのだが、
医者に行くのも面倒だし、
ええいママヨ、当分自然治癒に任せようと思っとる。
 ところでオノレより先輩の方によると、
四十歳を過ぎたあたりから、
10年サイクルくらいで大きな体調の波がくるという。
オノレも六十を過ぎた端境期をむかえ、
肉体的にキツいもう一山を越えにゃならんか?
「無事このキキを克服すれば、
後10年、七十過ぎまでは、タブン大丈夫だろう…」と、
七十四歳の大先輩役者に励まされた!

  ヒレカツ定食
Date: 2005-12-19 (月)
 某地・某所になかなか旨い豚カツやさんがあることを思い出し、
たぶん五年ぶりくらいに足を運んだ。
かつては月に何度も通ったのであるが、
小平に住んでから、すっかりご無沙汰になってしまった店である。
で、オノレが特に極上と感じたヒレカツ定食を食べたんだが、
こいつが極上からゴクありきたりなヒレカツに変貌、
いささかガックリ。
 出されたヒレカツを見た瞬間、
揚がった色艶、一切れ一切れの肉の厚みに、
以前出たカツとは別物という印象をもった。
このお店は、昔から御夫婦で商っており、
調理役のご主人は、もちろん昔のままのオトコである。
ただオノレが小平にきて間もなく、
子供さんを亡くすというご不幸があったと人伝に聞いた。
カツの調理に、それが微妙に影響しているのであろうか?
あるいは経営的に厳しい状況におかれ、
素材の質を落とさざるを得なかったのであろうか?
はたまたご主人の自覚のないまま、
調理の腕が微妙に錆び付いてしまったのであろうか?
オノレのカッテな推測では、
たぶん厳しい経営環境のためであろうと思う。
しかし極上がありきたりに落ちては、
客足もさらに遠のくのではなかろうか?
と、まあアレコレいらぬ心配をしながらお店を出て、
ふと、オノレは気づいたな。
 ヒレカツ定食の値段は五年前より200円も安かった!

  「死のような死」「湯たんぽを持った脱獄囚」(別役実・作)
Date: 2005-12-17 (土)
 二日前、《一の会》というグループの稽古場公演、
「死のような死」「湯たんぽを持った脱獄囚」(別役実・作)という、
どちらも一時間に満たない芝居を観た。
演出は側見民雄さん。
今年の独歩プロデュース「象」に、
通行人1役で出演してもらったベテラン役者である。
来年の「はるなつあきふゆ」にも出ていただく。
 この二つの作品は、まさに別役の不条理ドラマが、
これでもかこれでもかと展開していき、
ブラックな笑いと恐ろしさに満ちた世界である。
創り手にとってなかなか手強い作品だと思うが、
側見さんは役者の持ち味を生かしつつ、
奇を衒わず丁寧に演出されておりさすがであった。
 創り手の皆さんが真摯に取り組む姿勢が漲る舞台を観て、
オノレは側見さんと気持ちのよい酒をたっぷり飲んだ。

  その他
Date: 2005-12-13 (火)
 昨日、某テレビ局の朝番組であったが、
現在の衆議院の政党議席数を円グラフで示し、
その中で自民党、民主党、公明党はキチンと表記され、
共産党、社民党、国民新党、無所属などは、
まとめて「その他」であった。
いまやマスコミの報道の中でも弱者は切り捨てられ、
十把一絡げの時代なのか?
しかしこの十把一絡にされた政党や無所属の議員にも、
一千万以上の国民が票を入れているのである。
このテレビ局はこの国民たちをも、
十把一絡げの「その他」と見なしたにひとしい。
 芝居や映画にも「その他」の役は多い。
群集、盛り場の人、電車内の乗客、働く人々、etc…。
「その他」大勢だらけである。
そして多くの舞台や映画では、
まさに「その他」の人々が大切な役割を担って、
その作品の質を高めている。
 「その他」の世界を軽視し、
蔑ろにする世の中に明るい未来はないぜ。

  みずほ証券の株発注ミス
Date: 2005-12-12 (月)
 みずほ証券の株発注ミスは、
全てがコンピュータで処理されつつある社会への警告かもな。
株の売買の何たるかをまるで知らないオノレにとって、
たかが株のやりとりだけで利益を上げる投機社会の混乱は、
当事者の方々にはお気の毒だが、
チト珍しいドタバタ喜劇を見ているようでオモシロイ。
 ところで政府は、四五百億ともいわれる証券会社の損失を、
まさか公的資金で救済するなんてえことはあるまいな?

  別れ際
Date: 2005-12-10 (土)
 日頃、それほど深いお付き合いをしてない知人と、
久しぶりに出会って別れ際、
「近いうちに、またお会いましょう」と、
思わず言ってしまうことが多い。で、近いうちどころか、
それっきり何年も会うことのない方や、
中には突然人生とオサラバし、
二度とお目にかかることのない方もいたりもする。
そう思うと、浅い付き合いしかない人と会って、
「近いうちに、また」なんぞと軽々に約束して別れるのは、
あまりよい別れの言葉ではないような気がしてくる。
かといって、
「そのうちに、また会いましょう」てえのも、
ハナっからその約束が果たせるかどうか自信のない、
いかにも曖昧なニュアンスを感じさせる言葉だしな。さらに、
「いつか、また会いましょう」にいたっては、
ほとんど再会を期待しないでおくれ、という風で、
言った相手に「冷たいヤツ」と思われても致し方ない、
まことに拙い別れの言葉である。
 さりげない付き合いの知人だからこそ、かような方との別れ際は、
オノレの人品を問われているかのようでもあり、
なかなか微妙でムツカシイ。やはり、
「サヨナラ」だけが人生かい? 

  高所恐怖症
Date: 2005-12-09 (金)
 オノレはそうとうの高所恐怖症である。
10歳の頃、芝居に子役で出演し、
巡業先の高知で、古い劇場の簀子(天井)に上り、
梁から足を滑らせ宙吊りになって以来、
高い場所への恐怖がこの脳髄中に埋めこまれてしまった。
子供の目から見て感じた簀子から舞台までの距離は、
5階建てのビルから地上を見下ろすほどあったような気もする。
あの瞬間、咄嗟に両手で梁をしっかり掴んで墜落を免れたが、
掴むことに失敗していれば、
たぶんオノレの人生は、年端もゆかぬ享年10歳であったろう。
そんなわけで、オノレがみる夢でもっとも恐ろしい夢は、
高所から人が落ちたり、
オノレが高所に上らざるをえなかったりする夢なのである。
で、この恐ろしい夢を、オノレは数え切れないほどみてきたし、
今も時々みることから逃れられない。
 建築現場で勇ましい鳶職の人たちや、
高層ビルの窓ガラスを清掃する人たちを見ると、
同じ人間とは思えないオノレなのである。

  映画 「ゲーム・オブ・ライブズ」 そして、永遠の人
Date: 2005-12-08 (木)
 本日は「ゲーム・オブ・ライブズ」という映画の吹替収録。
オノレが当てる役はパトリック・スチュワート。
さよう、久しぶりのピカード艦長とのご対面である。
 1950年、サッカーのアメリカ代表が、
ワールドカップでイギリスに勝ったドキュメンタリー・ドラマ。
パトリック・スチュワートさんは、
そのワールドカップ・ブラジル大会を取材した若い記者・デントの、
老年役として出演しとる。
ところが懐かしいその顔を見せるのは冒頭だけで、
後はすべて語りのみ。
これはオノレにとってチト寂しい気がせんでもない。
それでも久しぶりに拝顔させていただいた艦長は、
ますます人間的味わいの深みをましたかのように思える。
 誰が何と言っても(誰も言っとらんが)ピカード艦長は、
否、パトリック・スチュワートは、
オノレが畏敬し愛する、永遠の人である!

  劇団1980公演 「行路死亡人考」
Date: 2005-12-07 (水)
 夕方CDドラマ「ぱにぽにダッシュ」の収録を終えてから、
そのまま紀伊国屋サザンシアターへ駈け付け、
劇団1980公演「行路死亡人考」(作・演出…藤田傳)を観劇。
 家族を捨て蒸発し、最後に焼身自殺した男の空白の30年。
その父の足跡と心の内を息子が辿って探るお話。
読んではないが、読めばなかなか面白い戯曲のような気がする。
しかし役者が速射砲のようにまくりたてる舞台は、
チト慌しすぎて、深みに欠ける印象であった。
それにしても蒸発した父役の方だけはマイペースで、
他の役者とおよそキャッチボールせず、
虚空を睨っ放しの演技に終始し、まことに不可解であった。
 出演者のベテラン女優さんと、
飛び込みで入った串焼きのお店が、
酒も料理もなかなかおいしくてよかった。

  透明人間
Date: 2005-12-06 (火)
 「透明人間」という米映画を吹替える。
どうやら水銀腺を頭に入れると透明人間になるらしい。
 オノレも幼き頃、透明人間になりたかった時期がある。
どうすればなれるか、アレコレ考えたが、
暗闇では黒い布、雪の中では白い布を被るてえような、
いわば忍術のごとき幼稚な発想を一生懸命カンガエタナ。
で、透明人間になって、
いかなるヨイことをヤラカそうと思ったのかてえと…、
もちろん正義のためにではない。
たぶん、今皆さんの想像したこととオナジです。

  この三日間
Date: 2005-12-05 (月)
 先週土曜日は鍵盤楽器奏者・武久源造さんの自宅に招かれ、
まことに愉快な時を過ごさせていただいた。
焼酎「百年の孤独」をいただきながら、
奥さんの心のこもった手料理をついばみ、
5年ほど前、福山で公演されたという、
源造さん作曲の「マザー・グース」の舞台をビデオ鑑賞。
(平本弘子さんという、地元のソプラノ歌手が歌っていた)
源造さんとお近づきになり、
オノレの音楽鑑賞レベルもチト深まった…かもしれん。
 日曜は、午前中に米映画の吹替オーディション。
オノレは今年もいくつかのオーディションを受けたが、
すべて不合格であった!
さよう、オーディションは受かると思って受けると、
落ちたときガックリ落ち込む。
落ちて当たり前と思って受ければ、ショックはあまりない。
往復の交通費が無駄になった…てえくらいのもんかな。
マケオシミデハ アリマセン。
 午後、両国シアターχで劇団Q、
「12・9‘1980・その前日ジョン・レノンは殺された」を観劇。
親しい先輩役者・松岡文雄さんが客演しており、
七十過ぎとは思えぬほどガンバッて、いい味を出しておりました。
松岡さんは来年の独歩プロデュース公演に出演していただく。
来年もガンバッて、よろしくお願い致します。
 今日は午前中、日本の名庭園を紹介するビデオのナレーション。
午後はヤマノカミと待ち合わせパスタの昼食。
午後二時近くであったが店内は満員。が、男の客はオノレだけ。
若い娘たちとおばさんがワイワイモリモリ、
パワーにあふれて賑やかであった。
まだまだ日本の多くの女性はヒマなのであろうか? 

  スキンヘッドよ、さようなら!
Date: 2005-12-02 (金)
 オノレの曖昧な記憶によれば、仏門に入るわけでもないのに、
この頭を剃ってスキンヘッドにしたのは、たぶん十八年くらい前。
以来、髪を伸ばしたことは一度もない。
 別に実利を求めて剃ったわけではないが、
この頭にしてヨカッタと感じることはある。
いくらか仕事先の憶えがめでたくなったような気もするし、
声優としてのキャラクターの幅がチトひろがったような気もする。
で、何より洗パツが楽で清潔なのが一番である。
 さて、そんなオノレは10日ほど前から、
思うところあって髪を伸ばしはじめた。
まだその長さは1cmにもならないが、
いやもう、ビックリコキマシタネ。
まずその頭髪密度の薄いこと。
さらにその頼りなく生えとる毛の多くが白いこと。
ま、顎鬚もずいぶん前からおおよそ白いのであるから、
当然といえば当然なんだが、毎日のように剃髪しとると、
まるでそんなオノレの頭の現実を想像しないんだな。
 しかしオノレは今、そんなヨレヨレの髪の毛一本一本の成長を、
毎日鏡で眺めながら、チト若返っていくような、
新鮮な気分をタンノウしておるのだ。
迫りくる年明け、たぶんオノレは、
「スキンヘッドよさようなら!」と叫ぶつもりなのであるが、
いつまで伸ばし続けられるか、自信はナイ。

  アニメ 「ぱにぽにダッシュ」最終回の音声収録・無事終了!
Date: 2005-12-01 (木)
 本日で半年続いたアニメ「ぱにぽにダッシュ」、
最終回の音声収録は無事終了!
オノレはエイリアン艦長という、
まことに得体の知れない怪しげな役であった。で、
「新スタートレック」のピカードをパロッているかのような、
このアニメの艦長を意識しつつ、
決してピカードのように知的でも勇敢でもないヤツとして、
真面目に不真面目な役創りをした半年間だったのである。
ホンマ、たくさんの若いピチピチギャルの声優さんに、
ムッチリ囲まれ過ごしたスタジオは、
そのカグワシイ香りで窒息しそうになるほどタノシカッタ!
 夜、韓国の劇団〈芸脈〉公演「悲しみの盃」を観劇。
日韓国交正常化40周年を記念して招聘した芝居である。
我が独歩ブロデュースの舞台に、
いつも大いなる力をかしてくれる面々が中心となり、
イロイロ苦労したあげく実現することのできた公演。
是非大成功してもらいたいのであるが…客席はチト寂しい。
 12月7日まで、千石の三百人劇場で公演中。
お時間のある方、よろしければ足を運んでくれんさい!

「悲しみの盃」Web http://www7a.biglobe.ne.jp/~asucat/