オノレ日記帳

2006年2月の記録



  チト冷や汗…。
Date: 2006-02-28 (火)

夢主は昔の人か我なるか目覚まし草の苦き涙よ (麦 人)

 てえような今朝の目覚め。
果してこれが短歌といえるのか皆目わからん。
ホンマ、作ってみたのは生まれて初めてなんじゃ。
チト冷や汗…。


  品川の変貌
Date: 2006-02-27 (月)

 昨夜は品川にお住まいの先輩俳優のご自宅で飲み会。
高層の立派な「都営住宅」でビックラこいた。
 夕方、自宅を出たときは土砂降りであったが、
家路に着く22時半頃にはその雨も上がり、
品川駅までおよそ15分、
ホロ酔い気分ででプラプラ歩いた。
で、品川駅から海側一帯の変貌ぶりに改めてビックリ。
小平のような郊外に住んどるオノレの目には、
まるで近未来のSF映画を見ているような風景。
もちろんこの高層のビル群の中にも、
多くの人の喜怒哀楽が詰まっとるんだろうが、
鉄筋コンクリートの鎧をまとって聳えるその群れから、
人の温もりは感じられない。


  水温む
Date: 2006-02-26 (日)

  いかること知ってあれども水ぬるむ   松根東洋城

 俳句歳時記でかような句を見つけた。
これから日に日に水は温むが、
社会の不正や不公平に対する人の怒りを、
この温もりのなかで曖昧にしてはならん。
 耐震偽装・SEB・ライブドア・防衛庁の談合…etc。
次から次に出てくる深刻な問題に、
怒りを通りこして諦めの心境にもなるが、
お上の偽装改革、二枚舌・三枚舌の政治をこのまま見過ごせば、
やがて日本の社会は滅びかねん。

  春雷の予報を耳に読む社説   麦  人 


  オノレの考え
Date: 2006-02-25 (土)

 このところフィリピンやタイの国内が騒々しい。
未だ世界には独裁的体制で国を統治したり、
一部権力者の腐敗がまかり通る国がある。
 もともと多くの民の中の一人でしかなかった民も、
なぜか一たび権力の座につくと、
いつのまにか一人の民であった己を忘却し、
だんだん傲慢に民を見下し、
民のためにならん権力をヌケヌケと行使するようになる。
さよう、日本の現内閣や政治家の中にも、
そんな体質を感じさせる方々がチラホラいないでもない。
ま、オノレは権力てえようなものとあまりご縁がなく、
幸か不幸かここまで愚鈍に生きてきたが…。
しかしこのオノレも万一権力を行使する立場におかれたら、
多くの民の中の一人でしかなかった愚鈍な己をたちまち忘れ、
たぶん皇帝のごとく振舞うような気がする。
よし、オノレが国家権力を握った暁は、
愚鈍な民の一人であったオノレを忘却せんよう、
傲慢な権力者に成り下がり、
民に糾弾され処刑されぬよう、
路上生活しながら国会や官邸に通うぞ!
 ゼニにはならんが愚鈍な民は、何を考えようと、
夢見ようとも自由である…ガッハハハ!!


  メダルの光
Date: 2006-02-24 (金)

 先月、オノレの一家に加わったオトメが愚図り、
今朝六時過ぎに目覚めたおかげで、
フィギュアスケート・荒川静香・村主章枝の自由を見た。
荒川の金メダルは文句なし、お見事であった。
ここまでメダル一つとれず、
面目丸つぶれのJOCもチト救われたよな。
彼らはしばらく荒川さんに足を向けて眠れまい。
 それにしても村主の4位てえのが、
どうもオノレには不満であった。
ショート・自由とも転倒せず、
ほぼ満点に近い魅力的なパフォーマンスだったと、
素人のオノレには見えたんだが…。
自由でコケたロシアやアメリカの選手より、
なぜ点数が低くなるんだ?
村主チャン、貴方の評価はオノレの中では銀であった!
と、オノレに認められてもウレシクネエカ。
 それはさておき、五輪の度にマスコミは、
メダルメダルとチト騒ぎすぎだよな。
オノレに言わせれば、
大多数のメダルをとれない選手たちのおかげで、
金・銀・銅のメダルも光る。
所詮メダルを望めんからと、
多くの選手が参加しない五輪になっちまえば、
メダルの光はその輝きを失うだろう。
 マスコミも世間も、
メダルをとれない多くの選手に、
金とは異なる、見えぬ光の輝きに目を向けよ!


  「悲しい酒」
Date: 2006-02-23 (木)

 NHK・BS2で放送される「FBI・2」の第2話、
オノレは末期の肝硬変を患った神父役。
その吹替収録を午後3時過ぎから赤坂で。
 この仕事を頂き、十数年前に肝硬変で死んだ知人をふと思い出す。
オノレと同世代で、長年小さなスナックを営んどった。
酒は一滴たりとも飲まぬ男であったが…。
つまり肝硬変・イコール大酒のみ、てえことでもないんだよな。
 このギターの巧いマスターの十八番は、
「悲しい酒」であった。


  東京都庁舎
Date: 2006-02-22 (水)

 朝日新聞の報道によれば、
完成からまだ15年の東京都庁舎のアチコチにひび割れが目立ち、
雨漏りがして補修に大わらわだそうである。
来年度、防水用の目地材の更新費だけで1億円。
清掃費、光熱費などの管理経費は年34億円。
本格的に建物の修繕をすれば、(その時期は迫っているらしい)
約1千億円もの都税を投入せにゃならんという。
何とこれは庁舎建設の総工費1570億円に迫る額という!
 15年以上前、新都庁舎を具現化した知事や都議、
都庁の役人たちは、
はたしてかような庁舎の将来を予測していたのであろうか?
建物の管理維持のために都民の膨大な血税が注ぎ込まれ、
一方、福祉や行政サービスの予算はどんどん削られる。
まさにこれを本末転倒といわずして何という。
オノレはもう腹立たしさをとうりこして、
見てくれ大層御立派な都庁のビルに、
出来ればジェット機で突っこみたくもなる。
今さら吼えてもはじまらんが、
旧都庁の建物をリフォームするだけでも、
都の行政は十分遂行できたのではあるまいか?
さよう、東京だけではなく、かようなバカげた公共建築物は、
日本全国アチラコチラに山ほどある。
 ところでオノレは、未だ都庁の建物内に足を踏み入れたことがない。
さぞかし知事室から眺める東京の夜景は、
「ウツクシイ」絶景なんでござんしょうね!? 


  長浜市の園児殺害
Date: 2006-02-21 (火)

 トリノ・冬季五輪で日本人選手の不振、
ホリエモンが自民党の武部幹事長の息子に、
3000万円送金せよと指示したかのようなメールの真偽、
中国国籍の女が幼稚園児を刺殺した事件etc…と、
テレビをみれば相も変わらず明るいニュースは少ない。
中でも滋賀県・長浜市の園児殺害には暗澹となる。
 車の中で、我が子も同乗しているその前で、
他人の幼児二人を刺身包丁で刺してしまう加害者の心理は、
心理学者でもなかなか正しい分析はできんだろう。
であるからして、オノレごときボケ役者が、
加害者の心を理解するには闇の闇だが、
彼女が異国の文化・人間関係にうまく馴染めず、
辛いフラストレーションの中にいたことは容易に推察できる。
 オノレも外国へ行ったり・外人との会話は苦手な人間。
日頃、インターナショナルな生き方を大いに肯定しつつ、
裏腹、己の内にある臆病な島国根性がどうも抜け切れん。
で、その根本には、言葉が通じない相手と、
コミニュケーションをいかにとればいいのか…てえような、
不安とコンプレックスの塊がある。
もし言葉や習慣、モノの価値観、
環境全てが異なる国に飛びこんで暮らしても、
オノレの場合、まず一年はもたんだろう。
深い孤独と猜疑と不安の中で日々悶々とし、
他人を殺すほど追いつめられる前に、
尻尾を巻いて日本へ帰国するか、
ひょっとするとオノレが己の命を絶つだろう。
 さて、六十過ぎたオノレの場合、
これからインターナショナルに生きるのはチト難しい。
しかし未来ある若者には願いたい。
勇気をもって異国の文化に交わり、
インターナショナルに交流し、
偏狭なナショナリズムを打ち壊す生き方をしてくれと。
かような日本人が多くなればなるほど、
長浜のような悲劇も減る日本の社会になるのではないか!


  泡盛には黒糖
Date: 2006-02-19 (日)

 数年前からオノレの晩酌は泡盛である。
冬はお湯割にしてコップ二三倍。
それで十分酩酊し床につく。
つまみに黒糖を舐めつつ飲むが、
これがお湯割とよく合ってつい舐めすぎてしまう。
舐めすぎても糖尿にはならんと沖縄の人に言われたが、
ホントか嘘かよくわからん。
ただオノレはそれを信じて舐めている。
サトウキビから糖汁を搾り、煮出して固めたものが黒糖。
で、泡盛てえのは、
黒麹菌を用い100%米こうじだけで発酵させた蒸留酒。
とにかく二つとも美味だし、健康にもよさそうで、
このところすっかり日本酒とご無沙汰。
 そういえば日本酒も塩を舐めて呑むとなかなか旨いが、
これはほどほどにせんと血圧に悪いだろう?
 さて、このところ暇気味のオノレは、
今宵も黒糖齧って泡盛のお湯割りを嗜み目蓋を閉じる。
声の仕事も、舞台の仕事も充実…てな、
嬉しい夢を見るためにネ。


  楢 喜八さん
Date: 2006-02-17 (金)

 曇り日。
昼過ぎ、挿絵画家・楢喜八氏とお会いし、
秋公演「はるなつあきふゆ」のチラシ・舞台美術の依頼をする。
 楢さんとの出会いは、
すでに廃業した水道橋の喫茶店「しろとくろと」。
かれこれ二十年ほどのお付き合いになるか…。
 1999年、オノレの独演「リックサック」を、
武蔵野芸能劇場で公演したとき、
実に味わいのあるチラシをデザインしていただいた。
喜八さんの描く画を大雑把にとらえては申し訳ないが、
メルヘンと物語性にあふれて色鮮やかであり、
たぶん宮沢賢治の影響をかなり受けていらっしゃる。
 この秋、喜八さんがどんなチラシを創ってくれるか、
舞台装置の書割にどない美術を描いてくれるか…。
まだお引き受けしてくれたわけではないが、
これから会って、三顧の礼を尽くしお願いする。


  眠れぬ御時世
Date: 2006-02-15 (水)

 オノレのパソコンにも、
ずいぶん前から迷惑メールというか、
いかがわしいメールがチョコチョコ送られてきとったのだが、
最近は一日にウンザリするほどその数を増し、
ほとほとゲンナリ。
ついにメールアドレスの変更を余儀なくされた。
そのオノレのメールアドレスは、
このホームページ上に最近まで公開しとったが、
かような事情により、変更したアドレスの公開は控える。
お許しくだされ!
 去年の夏の舞台以後、
妙ないいがかりをつけて夜中に電話してくる、
えたいの知れんオトコがいたり、
近隣のマンションで押し入り強盗や空き巣の被害が続いたり、
いやはやおちおち眠れぬ御時世でありますなあ…。
できれば人間性善説を信じたいオノレなのではあるが、
これもチト疑わしくなってきましたネ。
とにかくほどほど我が身の安全のため、
それなり対策を考えにゃならん。
 昔々、戸も玄関も開け放ち、
平気で家を留守にできた日々が懐かしい。
 「コンナ日本ニ ダレガシタ?!」


  母の十七回忌
Date: 2006-02-13 (月)

 今日は母の十七回忌で谷中のお寺。
オノレは母の四人の子供の中で、
最も親不孝で罰当たりな息子であった。
母との思い出は山ほどある。
およそ母を悲しませた思い出ばかりで、
喜ばせたことの余りのなさに思い出すたび気が滅入る。
しかし今さらながら殊勝に悔やむ不肖の息子を、
あの世の母はせせら笑っているだろう。
 溜め息交じり、口癖のように母がもらした言葉。
「しょうがないねえ…」
 その母の思いを噛みしめながら、
これからしばし坊主の経を聴いてくる。 


  恩人の一人
Date: 2006-02-08 (水)

 オノレがアニメに声を吹き込んだ最初は、
「ドカベン」というシリーズで、
高校野球をテーマにしたアニメだった。
インターネットで検索すると、
1976年にフジTVで放送開始とあるから、
今から30年も前のことになる。
 オノレはこの頃、なぜか大前田伝という芸名で、
土門という剛球投手の声をやらせてもらった。
さて、このとき音響監督を担当したのは斯波重治さん。
オノレより十くらい年長かと記憶しているが、
長い間、オムニバスプロモーションという、
音声製作会社の社長&演出家であった。
つまり斯波さんは、オノレを声優界へ導いてくれた人であり、
アテレコ・吹替のノウハウからギャラのことまで、
感謝しきれぬほど教えてくれた恩人の一人である。
何年か前、会社代表も製作現場の第一線からも退き、
今は観劇・読書のマイペースな日々らしい。
 今日の午後、その斯波さんの御自宅へ、
たぶん二十年数年振りに伺い昼食を共にする。
その昔、斯波さんは新劇の世界に身をおき、
役者の経験があり、舞台の演出もされたことがある。
なかなか御一緒になる機会もすくないのだが、
たまにお会いすれば、昔の話、芝居の話、我々の業界話、
最近読んだ本の話と話題は尽きず、
時を忘れて若返り、喋り捲るオノレである。


  立春過ぎて…
Date: 2006-02-07 (火)

 立春過ぎてまた雪の夜…寒い!
大雪に苦しむ地方の人々に比べれば、
とても「積もった」とはいえぬ雪の量で、
ずっとシアワセな東京の我々ではある。
が、その東京といえども今年の寒さは例年より厳しく感じるな。
かような寒さの影響か、
はたまた子犬のお転婆オトメがやってきて、
チト一緒にハシャギ過ぎたせいか、
昨日から右腰あたりに軽い腰痛がある。
子犬とジャレルのもほどほどにせにゃアカンわい。

  蛸坊主夜の寒気に目を覚ます    麦  人


  内面の充実
Date: 2006-02-06 (月)

 オノレが舞台で演じているときもそうなのであるが、
演じているオノレ自身の表現というものは、
本人自身にはよく見えないというか、
なかなか掴めぬものなんだ。
で、人の舞台を観ていて、
無駄な動きをしない役者てえのは、
客への求心力が強いなあと、つくづく思う。
つまり反対に、
必要以上に身振り手振りでドタバタ動く役者ほど、
客への求心力は弱くなる。
もちろん演じる役にもよるとは思うのだが…。
とにかく無駄な動きをギリギリ削いで演じる役者の佇まいてえのは、
そのぶん内面の充実が客席までほとばしってくるかのようで、
心打たれることが多い。
しかしこれは上演される作品世界の仕組みと、
自分が演じる役の性根を確かに掴んで、
厳しい稽古を積み重ねてこそできる技だろう。
だからそこを疎かにしている役者は、
つい小手先の引き出し演技にすがって身振り手振り煩く、
自分の不安な役創りを誤魔化すことに終始してしまう。
あげく作品世界も役の内面もおよそ客席に伝わらず、
薄っぺらな人間が、ただ舞台を右往左往するだけ。
客は芝居を観た悦びに満たされぬまま劇場を出る破目となる。
 一昨日、某芝居を観て、
企画や作品はそれなり意欲的で面白いのに、
まるでいい加減な創りをしている演出と役者の舞台を拝見、
かようなことを強く感じた。
 オノレもしっかり自戒すべし!!


  海風の思い出
Date: 2006-02-03 (金)

 昔、光太郎の「智恵子抄」を愛読し、
冬の荒波が寄せる九十九里浜へ行ったことがある。
その頃、しばらく付き合っていた女に三行半され、
強い海風を浴びながら、酒と感傷気分に一人溺れた。
光太郎の詩のごとく、まさに千鳥がチイチイと戯れ、
オノレはその千鳥を千鳥足で追いかけた。
瞬間、首のスカーフが風にさらわれ、
波打ちぎわへと吹き飛ばされた。
別れた女がくれた絹のスカーフである。
慌てて追いかけ手でつかみ潮水を絞った。
また首に巻くと濡れたスカーフの冷たさに、
別れぎわの女の眼差しがよみがえった。
沖からこれまでにない大波が寄せてくる。
オノレはスカーフを波打ちぎわの砂浜にそっとおいて、
十メートルほど後ずさりし大波を待った。
押し寄せた大波はあっという間にスカーフを呑みこみ、
オノレの視界から消えて浮かんでこなかった。
あの日の強い海風は、その日の夜もおさまらず、
侘びしい民宿の窓ガラスを叩きつづけた。


  いま世の中をかすめてゐるものは…
Date: 2006-02-02 (木)

 詩人・金子光晴は、
「コットさんのでてくる抒情詩」という作品の中で、
かつての戦争の時代を次のように書いた。

   いま世の中をかすめてゐるものは
   絶滅の思想だ。
   杪(こずゑ)に嘯(うそぶ)き、虚空に渦巻いてゐるものは。

 さて、光晴が今日の日本社会を見れば、
「絶滅」を「拝金」とでも書くのであろうか?   


  《吹替スタジオ・ロビーでの会話》
Date: 2006-02-01 (水)

「本番の舞台に出ている夢ってよくみるだろう?」
「しょっちゅうみますね」
「でも客から拍手喝采浴びる幸せな夢はまずないぜ」
「ほんと、ろくな舞台の夢しかみませんね」
「オノレはだいたい台詞が出てこないで七転八倒している」
「僕は持ち道具や衣装がみつからなくて右往左往するんです」
「どういう芝居か全くわからん舞台に出ているんだよな」
「すごくやりたかった役や作品の舞台が多いですね」
「けっきょく役者ってえのは強迫観念の塊てえことか」
「あまり自信がないのに役者をしてるせいですかねえ」
「自信のある役者は拍手喝采なんてえ夢ばかりかい?」
「そういう役者に聞かないとわかりませんよ」
「そういう役者がいたらオシエテクレヨ」