あの頃の夏休み、昼はうるさいほど蝉が鳴き、 夜は雨戸を開け放ち、蚊帳の中で寝た。 あの頃の冬休み、昼はどんなに寒くても外で遊び、 夜は湯たんぽを抱えて眠りについた。 そう、居間の炬燵は炭団であった。 あの頃、自宅に風呂のある家は少なく、 夕方銭湯に行くと、また悪タレ仲間と会って遊んだ。 もちろんシャワーなんぞという上品なものはなく、 桶の湯を頭からかぶって脱衣所へ上がった。 テレビが生まれて間もないあの頃、 音質の悪いラジオに耳をちかづけ、 もっぱら野球中継を必死に聞いていた。 しかし野球嫌いの父に見つかると、 慌ててスイッチを切ってスットボケタ。 「君の名は」やら「お父さんはお人好し」やら、 ラジオドラマ全盛時代でもあった。 父は滝沢修の「銭形平次」をよく聞いていたような記憶がある。 漫画「赤胴鈴之助」の連載がはじまったのもこの頃。 十歳前後のオノレたちは、毎日チャンバラ遊びに明け暮れた。 昭和20年代後半、 最近、その当時かと思える夢をときどきみる。
在沖縄米軍海兵隊のグアム移転費を、 日本が約7千億円も負担することで合意したという。 国民一人当たりにして5,500円の出費となるらしい。 たく、アホな日本政府の対米追従もここまできたかと、 オノレの腸は煮えくり返っとる。 どうせならこの7千億を韓国に無償援助し、 引きかえに竹島を日本の領土として認めてもらっちゃどうだい? もっともあちらは「とんでもない」と、断るだろうなあ…。 そろそろ日米安保条約破棄を真剣に考える時代である!
《博打と相場は死ぬまで止まぬ》というらしいが、 オノレもギャンブルが嫌いな口ではない。 とくにお馬さんには、馬券でずいぶん蹴飛ばされ、 路頭に迷ってもおかしくないほど痛い目にあった過去がある。 にもかかわらず、オノレは未だに懲りず、 ヤマノカミがお許しさえくだされば、 お許しくださる範囲で馬券を購入する気が失せん。 もっともそのお許しを頂くのは、 馬券を当てるよりも難しいのが現状でもある。 さて、このオノレのごとき状況になると、 世のギャンブル狂の一部は、何とか女房の目を盗み、 ついワンちゃんやダンスチームのCMに誘われ、 恐ろしく金利の高い銭を借りたりしちまうんだろうな。 オノレもそういうところへ再び足を運ばんよう己を戒め、 ヤマノカミのお許しが出るまで馬のことは忘れよう! 桜花賞も皐月賞も終わり、 もうすぐダービーが迫ってきやしたぜ…ヤマノカミ?!
友人の中年役者氏はけっこうなヘビースモーカー。 しかし三年前ほどから、奥方に間接喫煙の危険性を指摘され、 以後、自宅においては喫煙の度、キッチンの換気扇を回し、 そこに唇を突き出して煙を吐くそうな。 オノレも一日40本以上は喫煙するニコチン中毒。 自慢できることではないが、 そりゃもう、煙草嫌いのヤマノカミの、 冷たい眼差しとシカメッ面に耐えながら、 ここまで何とか自宅喫煙を強行しとる。 「もしアンタが、ベランダに出ろと言ったり、 換気扇と睨めっこして煙草を吸えッてえんなら、 オノレは夫婦別れする」と、宣告まではしとりません。 が近頃のヤマノカミには、 「煙草をとるか、あたしをとるか」と、 決断を迫ってきそうな雰囲気がなくもない。 たしかに間接喫煙により、 その寿命が多少短くなる虞れもあり得るんだろうが、 喫煙者にとってカンバシクナイ、世の風潮に影響され、 今さら厳しい態度をとられてもねえ…。 さて一服…。ウメエナア!
昭和21年は、イングリッド・バーグマン、 ハンフリー・ボガード主演の米映画、 「カサブランカ」が大ヒットした年である。 風俗史年表によれば、この年の洋画入場料は10円。 日本映画の封切最高料金は3円だったとある。 現在の映画料金は、洋画・邦画ともだいたい1800円だから、 戦後から比べて洋画は180倍、 邦画は何と600倍の入場料てえことになる。 それでは21年当時、芝居の入場料はどれくらいで、 それが今は何倍になったのか? 年表に掲載されてなかったのでチトわからん。 もっとも芝居の観劇料は、公演形態によって相当の開きがあり、 単純に映画と比べるのもどうかと思うが、 それでも映画に比べて割高感は否めない気がする。 さて、非力を承知で芝居をプロデュースし、 お客様にチケットを売っているオノレとしても、 料金をギリギリ安くしたいと、それなり努力はしております。 が、これ以上安くはできないという辛い現実もありまして、 この秋公演のチケット代は4500円…オユルシアレ! (それでも黒字になりそうもないのが現実です) 国や行政の文化に対する無知・無理解はさておき、 一人でも多くの人に芝居の面白さを認識してもらうため、 より創意工夫し節約もして、 低料金で面白い公演のありかたを生み出すことは、 今後のオノレに課せられた『難しい宿題』なのであります!
数日前、朝八時前の電車に乗ると超満員 ! オノレの仕事は朝十時からの仕事が多く、 およそ九時前後の電車に乗ってスタジオへ向かう。 もちろん座ることはまずできんが、 足の置き場に困るほど混んではおらん。 しかしこの朝の電車では、一度置いた足は一歩も動かせず、 乗客同士、不本意にも互いに抱き合うがごとき密着状態。 わずか一時間の違いで、 電車の混み方はこうも変わるのかと、 改めて認識したのである。 ところで、この地獄の満員電車で一つ学んだことがある。 《座席の前には決して立ってはイカン》てえこと。 とにかく己の体を支えてくれるものがないから、 座ってる人の頭越しに、 窓ガラスの方へ手を伸ばすことになる。 また、座席の人の両足の間に立たざるをえんので、 ひょとしてその股間を押し潰す破目にもなりかねん。 吊り革なんざ役にたたんし、超満員電車で座席前に立つのは、 まことにキケンであるという教訓を得た。 さよう。超満員電車においては、 人と人の間にまぎれ込み、無駄な抵抗はせず、 体の力を抜いて、ひたすら揺れる車内に身を任せ、 イヤイヤ人と抱き合う密着状態の中に、 我が身を置くのが最も安全であり、 意外とラクな過ごし方なのである。
この一週間のうち三日をかけて、 「ライオンが吼える時 ー MGM映画の歴史 ー」 というドキュメンタリー映画の音声収録に没頭しとる。 三本シリーズになっており、一本がおよそ二時間。 作品の進行役とナレーションが、 ピカード艦長、いやいや、パトリック・スチュアートさんで、 ありがたくもオノレの出番となった。 とにかくボリュームたっぷりの原稿。 その原稿チェックとリハーサルに費やす時間もタップリ。 まことに労多くして○○○の少ない、タイヘンな仕事なのである。 ま、それはさておき、サイレント時代から始まって、 「ベン・ハー」「風と共に去りぬ」「2001年宇宙のたび」etc…。 かつてオノレが映画館でのめりこむように観た、 懐かしき名作のシーンが次々に映し出され、 リハーサルしながらもつい魅入ってしまい、 まことに感慨深い仕事でもあった。 MBM映画は、1924年4月に発足し、 1986年11月にその歴史を閉じたが、 その62年余にわたる興亡の歴史は、 シリーズ3本をぶッ続け、 6時間かけて観てもあきることはないだろう。 いずれCSのスターチャンネルあたりで放送されそうだが、 まだハッキリしたことはオノレにもわからん。 DVDにでもしてくれればねえ…!?
吉村昭の「海も暮れきる」は、 俳人・尾崎方哉が瀬戸内海の小豆島に渡り、 凄絶な死を迎えるまでの八ヶ月を描いた小説である。 東京帝国大学法学部卒のインテリであった方哉は、 自虐的とも思える生き様で、妻を捨て、放浪し、 末期的な結核の身で赤貧の暮らしを送り、 四十二歳という若さでその一生を終える。 晩年の方哉の心に巣食う孤独と修羅を、 吉村昭の小説は、まことにリアルに描いてドラマチックだ。 オノレはこの小説をずいぶん前に読んだが、 読後しばらく興奮し、方哉に負けじと深酒をしたおぼえがある。 昨夜これを再読し、その面白さに再び唸り、 また少し泡盛を飲み過ぎちまッたな。 ところで同時代に生きた尾崎方哉と種田山頭火には、 共に放浪の身となり自由律句の俳人ということで、 いろいろ重なる部分もあるように思える。 しかし山頭火の句には、乞食のごとき暮らしであっても、 なんとなく長閑で楽天的な姿があり、 方哉の句からは、あまりそんな雰囲気を感じない。 不治の病を胸に抱え、生死の狭間でのたうつ苦境の日々が、 山頭火よりかなり色濃く切実に、 生々しい風景を伴ってオノレには伝わってくる。 いずれにせよ、この二人の自由律句の放浪者は、 時代の流れに乗ることなく、否、乗ろうともせず、 自ら臨んで修羅の道を歩いたような気がせんでもない。 二人の遺した数々の名句は、敢えて当時の社会から孤立し、 衆生の煩悩を重く抱えて歩く中から生まれた…と、オノレは思う。 オノレのごとき平凡を棄てきれぬ生活者にとっては、 チト羨ましくも思える、この二人の俳人の生き様である。 ころり寝ころべば青空 山頭火 嵐のふとんにもぐりこむ 方 哉
家の近くに満天星躑躅(どうだんつつじ)が咲いている。 広辞苑によるとその由来は、 躑躅の分枝状態が灯台の脚に似ることから…とある。 元々は灯台躑躅といったらしい。 いくつもの鈴型の白い花が地に向けて垂れる姿は、 なかなか可憐で美しい。 このいくつもの花を遠目に見ると、 満天の星に見えてくるような気がせんでもない。 今や都会ではなかなか眺めることのできない満天の星。 地に咲きほこるこの躑躅に、 ささやかなオノレの夢でも祈ってみようか…。 揺れながら満天星躑躅の嚏かな 麦 人
イランがウラン濃縮に成功したと発表、 国際的非難を浴びている。 いやはや、次々核が拡散していく現状はなんともおぞましく、 それは同時に人類の無智・無能ぶりを証明しとる。 かような現実が続く限り、 やがて地球は破滅的近未来を迎えるのではないか? で、かような嘆かわしい現状を我々は放置してはいかん。 いかんのだが、米国をはじめとする核保有国が、 非核保有の国に対し威丈高に、 「核開発はケシカラン」とほざいたところで、 オノレにはまるで論理的正当性を感じないのも事実である。 保有国が説得力ある主張するためには、 自ら保有するその核を完全廃棄する他ないだろう。 片手に原爆を握り、 片手に人類の平和という錦の御旗をかざす核大国は、 まず己の内なる毒から始末せよ!
破天荒というか破滅型というか、 そのタイプの人には何故か大酒飲みが多い。 俳人でいえば昨日の日記で引用した山頭火然り、 尾崎放哉然り、作家では坂口安吾なんぞもそうであった。 酒に溺れるから破天荒になるのか、 破天荒なやつだから酒に溺れるのか…、 そこのところはハッキリしない。 生きて何かと人様の顰蹙(ひんしゅく)をかい、 じっさい徒(ただ)ならぬ迷惑をかけた彼らは、 まさに自己破滅的にこの世とオサラバしとる例が多い。 しかしそんな日常の中から、 彼らは後世に残る作品を立派に活字で残した。 死んで褒められ、花実も咲いとる。 さてオノレの知る、今は亡き舞台役者にも、 やはり大酒飲みで破天荒、破滅型てえのは多かったな。 彼らの生活は滅茶苦茶であったが、それ故か実に個性豊か、 その人ならではの強烈なニオイを、 天衣無縫、そこらじゅうに発散しとった。 生前、酒やカネでアチコチ迷惑をかけても、 死後それを責める人より、舞台では稀有な役者であったと、 評価する人のほうが多かった。 少し残念なのは、かような役者の舞台が、 オノレの脳内にしか残っとらんこと…。 昔の舞台役者は作家のように作品を未来に残せん。 今の時代なら、こういう破天荒な役者の演技を、 DVDで残せたりもしようが、 ずいぶん前に鬼籍の人となッちまった彼らの強烈な演技は、 共演して目を剥いた役者や、 そのあまりに臭い演技にブッタマゲた、 観客の記憶の中にのみあるだけだ。 もっともこの潔さこそ、舞台役者の本望かもしれんぞ。 え、オノレも破滅型だろうって? いえいえ、とんでもない。 確かに「ケイザイ」のようなところで、 チト破滅しそうになった過去はございますが、 オノレは酒に溺れんし、 近頃いたってオトナシイ日々を送る、 しがない役者のハシクレなのであります。
今月は何故か洋画吹替えの仕事が多い。 作品ごとに多様なキャラクターの役を頂き感謝してるが、 オノレの気づかぬうち、 今ではおよそ老人役を中心にキャスティングされておる。 で、かような傾向でチト口惜しいのは、 権力や金で女を侍らすことはあっても、 ドラマチックなラブシーンなんざ、 およそないッてえことだよな。 ああ、哀しきかな…こうしてオノレは、 年々公私にわたり枯れてゆくのか! なんとなくあるいて墓と墓との間 (山頭火)
阪神タイガースの金本知憲選手が、 904試合フル出場の世界新記録を達成したという。 あまりに凄い記録で、オノレも思わず驚嘆の息をついちまった。 まさにこれは超人的記録。 じっさい世の中には化け物みたいな男がいるんだなあ…。 もちろん彼が超人になるべくチャンと努力し、 多くの苦闘の日々を乗り越えた上に、 この世界新記録の達成があるのだとオノレは理解しとる。 が、努力だけで達成できる記録でもなかろう。 実力・運・信頼(チームからの)、もろもろ伴なわにゃならん。 果して金本選手はあと何年、何試合、 フル出場の世界新記録を更新し続けるのであろうか? ところでオノレも《自己記録》に限れば、 人様に誇れるものとてないが、日々あれこれ更新しとるな。 生存日数・現役役者年数・夫婦生活日数etc…。 何とモロモロ、その生活の全てが、 我が自己記録更新の日々なんだと、つい今しがた発見した。 「誰だってそうだろう!」 サイデシタカ。 しかし例え凡人であろうとも、否、凡人であるからこそ、 今日一日「また生きる」てえことは、 タイヘンな更新記録なのである…と、オノレは思う。 さて、今日も一日、オノレなりにガンバッテ、 モロモロ自己新記録の更新だ!
還暦を過ぎてから持病のごときになってしまった症状に肩凝りがある。 首筋から肩にかけてのあたりがとくに酷い。 それまで全くかような痛みの苦しさを知らなかったオノレは、 ここにきてサロンパスのような鎮痛消炎テープを使わざるを得なくなった。 針・灸・マッサージに通ってみようかと思わないでもないが、 刺されたり、据えられたり、揉まれたりされるのはどうも苦手だし、 たぶん楽になっても一時的な気がするし、 それが癖になってチョコチョコ通院すれば治療代も安くはない。 それに肩凝りの最大の要因は、 運動不足とオノレの寝相の悪さであるとカッテに分析しとる。 で、寝相の悪さは今さら矯正できんが、 運動不足はオノレの努力しだいであるから、 耐えられんほど肩が痛くなったらアキラメテ努力する予定だ。 それまでに、いかなる運動が肩コリに効くか、 しっかり調べておかにゃならんわい!
70代4人、60代4人、50代3人、40代3人、30代2人。 たぶん平均年齢50代半ばになる。 実はこれ、この秋の独歩プロデュース公演、 「はるなつあきふゆ」に出演して頂く役者さんの平均年齢。 風雪を凌いで、人生経験豊かに生きてきた、 まことに頼もしい方々がそろった! 今夜はその出演者の中でも最高齢の、 パワーにあふれた女優、加藤土代子さんの舞台を観に行く。 六本木・俳優座劇場「出番を待ちながら」(作・ノエル・カワード)。 この舞台も70代の《若い》女優さん、 7人が出演しているらしい。 楽しみだなあ!
今朝は雪化粧の富士山がくっきり見えて美しい。 5日に花見の集まりに誘われているが、 桜は昨日あたりから散りはじめている。 明後日までもつだろうか? それにこの日の予報は雨である。 予定していた仕事がバレたので、(無くなったてえこと) 久しぶりに親しい芝居仲間と集い、 ハラハラ散る桜吹雪の中で美味い酒を飲みたいんだが…。 どうも中止になりそうな雲行きだな。 散る桜雪の舞台を描き見る (麦 人)
夕方からCDドラマ「少年陰陽師」#8の音声収録。 原作も人気があり、これまで出したCDも売行き好調とか。 秋からはシリーズ・アニメになって放送されるらしい。 オノレは主人公の祖父・安部晴明役で稀代の大陰陽師。 孫を一人前の陰陽師にせんがため教育しつつ溺愛しとる。 魑魅魍魎たっぷりの世界ではあるが、それほど恐ろしくはない。 ところでCDドラマてえのは本編とは別に、 出演者がワイワイガヤガヤお喋りする、 トークサービスのようなものが定番になっとる。 オノレはどうもこいつが苦手でいつも悩む。今日も、 「オノレを動物に例えれば…」 かようなテーマでトークせいという。 オタスケアレ!
昼、NHK教育で放送されている英語教育番組、 「ライオンたちとイングリッシュ」の最終吹替収録。 先月から併せて10本の収録であったが、多分これでお終い。 英語のまるでわからんオノレが、英語教育の仕事をし、 いろいろな役をさせていただき、 イロイロ難しかったのであるが、 まことにタメになる愉しい現場であった。 おかげでオノレの英語力も…上達せんかった。 夜は文学座アトリエ公演「エスペラント」(作・青木 豪)を観劇。 5年ほど前から親しくお付き合いしている臨時小学教師で、 アマチュアチェロリスト&セミプロ女優という、 まことに豊かな生き方をされているM・Oさんと一緒。 その彼女の良く知る教師の世界をドタバタ描いた芝居。 今日の朝日夕刊にその劇評が掲載されておりベタホメ。 それを帰宅してジックリ読ませていただき、 「不思議な観賞感覚の劇評家がいらっしゃるなア…」と、 オノレはオノレの未熟な観賞感覚を《ハンセイ》したのである。