オノレ日記帳

2008年4月の記録



  初通し稽古
Date: 2008-04-28 (月)
 日曜日、「おたまじゃくしはかえるのこ」は、ようやく初の通し稽古。
これまでは一つ一つのシチュエーションを丁寧に探りつつの部分稽古。
それぞれの登場人物の役割を構築することに多くの時間を割いた。
十人の役の形象が、絡み、葛藤する今回のドラマ全体の姿は、
はたして、いかなる世界として客席にとどくのであろうか?
 初通し稽古を某劇団のベテラン女優さんが見学。
「最初の通し稽古とは思えぬほどオモシロカッタ!」との感想。
その言を、プロデューサーとしてはまことに嬉しく思い、力を得た。
が、ホメられて、ユメユメ油断してはなるまい。
 残された本番までの稽古日数は一週間だ!
(土日のチケットが、もうすぐ満席になりそうな勢いです!)

  詠嘆の排除
Date: 2008-04-27 (日)
 オノレは昨日の稽古で、
ここまで積み上げてきたオノレの役のもの言いにメスを入れて、
台詞のテンポを大胆に早め、相手役との間合いを詰めた。
演出の求めているオノレの役の形象を生み出すに、
これまでのスロー気味なもの言いや間合いでは、
どうも生み出せんような気がしたからだ。
結果、今日に限れば、演出から否定的ダメはなく、
見ていた女優さんによれば、舞台がしまり、
これまでよりよくなったと肯定的感想であった。
テンポを早め、間合いを詰めることによって、
それまでのオノレの表現にあった、
過剰な「詠嘆」が排された…のではないか。
 試行錯誤はまだまだ続くが、一つの灯りが見えてきた。

  確信の持てる航路を!
Date: 2008-04-26 (土)
 オソロシイ。
「おたまじゃくしはかえるのこ」の稽古日数は、
ゲネプロをふくめ、残りわずか九日しかない。
そしてまだオノレはオノレの役の形象に自信がもてない。
毎度のことなのではあるが、
役への思いは右に揺れ左に揺れ、
オノレの稽古の毎日は、大海の小船のごとしである。
迷いのない、確信の持てる航路を一日でも早くみつけたい!

  新国立・小劇場 日韓合同公演「焼肉ドラゴン」
Date: 2008-04-23 (水)
鄭義信さま。

 昨夜、あなたの作・演出(粱正雄・共同演出)、
「焼肉ドラゴン」を観させていただきました。
で、凄まじい『焼肉』を、たっぷりご馳走させてもらいました。
とにかく味が強烈にうまく、カブリツキで食いすぎ、
この胃袋が裂けそうな痛みに、チト狼狽しました。
そして遂に、オノレの眼に血の涙が滲んだらしく、
危うく失明するかと錯覚するほどでした!
 三度繰り返されたカーテンコールの熱き拍手。
オノレも共に拍手しつつ、
同じ演劇人として実に羨ましく、正直、嫉妬を感じましたよ。
が、あの拍手はまさにまさに「ホンモノ」。
「サクラ」のつけ入る余地なんぞありません!!

  「修正」 困難
Date: 2008-04-22 (火)
 しばらく続いた5月公演の稽古休みは今日で終わり。
面白い舞台になるか、否か、明日からいよいよ正念場である。
この稽古休み中、改めてオノレは、
台本の台詞一つ一つを再点検することに、多くの時間をさいた。
するとやはり出てくる、出てくる…。
見落していたところ、誤って解釈しとった箇所が。
今日まで、台詞を覚える過程もふくめ、
相当な回数を読んどる台本なのに。
ホンマ、正しい台本解釈の答えを導き出すのは難しい。
そして今、明日からの稽古再開にそなえ、
誤った解釈により表現しとった箇所を、必死に修正しとる。
 かように誤ってしまうその最大の源は、
たぶんオノレのオツムの弱さにあるのだ。
しかしこればかりは、今さら「修正」不可能だからな…。
 今夜は新国立劇場・小劇場で、
日韓合同公演「焼肉ドラゴン」を観る。
注目の劇作家、鄭義信の作・演出。
タイトルのごとく、「旨そう」で「凄まじい」舞台のような、
そんな予感がしてワクワクしてくる。

  「宇宙」 と 「命」
Date: 2008-04-21 (月)
 地球のすべての生命体は、
もともと不滅世界(宇宙)から誕生し、
そこへもどるだけか…。
地球そのものも、遅かれ早かれ爆発し、
やがてどこかの宇宙空間に融けこんでしまうわけだろう。
で、たぶん多くの宗教が、
科学でも未だ答えのでないこの不滅のような「宇宙」と、
はかない「命」をうまく利用し、
たっぶりとカセイデオラレル。
しかし自然科学の世界からすれば、
この不滅と思える宇宙の解明は、
きわめて物理的な世界であって、
情緒的思考で答えの出る世界ではあるまい。
ま、宗教にも科学にも疎いオノレは、オノレの命を、
「親にさずかり、いずれ無に帰すもの」、
くらいにしか考えてないのだが…。
 詩人・草野心平は、
この不滅のような「宇宙」と、
はかない「命」について、多くの作品を遺した。

   さやうなら一万年  草野心平

闇のなかに。
ガラスの高い塔がたち。
螺旋ガラスの塔がたち。
その気もとほくなる尖頂に。
蛙がひとり。
片脚でたち。
宇宙のむかふを眺めてゐる。  

  言わずもがなの…
Date: 2008-04-20 (日)
 昨日の土曜日、
「ユメの火星航路」(レクラム舎公演)と、
「ひなあられ」(劇団ハートランド公演)、
この二つの芝居を観終わって、改めて感じたこと。
 役者は己の役の「個性」を適確につかみ、
さらに己と役の「個性」を融合させ、適確に演じること。
それが出来ている役者の役の存在は、
客席に濃い人物形象として伝わり、
まことに深く魅力的に見えるということ。
つまり、漠然と類型的に役の個性をつかみ、
己の個性と融合させても、
かような役は薄く、底の浅い人物形象として、
客席からは見えてしまうということ。
それがどれほど自然、かつ、そつない演技であったとしてもだ。
 ああ…、言わずもがなの結論ではあった!
それにしても、5月の独歩公演で主演する大西多摩恵が、
「ひなあられ」で見せてくれた人物形象は、
惚れ惚れするほど深く、魅力的だったよなあ!
「ひとつこちらの舞台でも、ヨロシク オネガイ イタシマス!」

  稽古休みで…。
Date: 2008-04-19 (土)
 ここしばらく稽古休み。
その間を利用してアチコチの舞台を観まくる。
昨日は吉祥寺シアターで、文学座アトリエの会公演、
「ダウト ― 疑いをめぐる寓話 ―」を観劇。
オノレの姉、寺田路恵が主演している舞台である。
であるからしてチトその感想を書くのはカキニクイ。
が、欲目ぬきで姉は好演しとったし、
全体として、なかなか見応えのある舞台だったな。
 作者はジョン・パトリック・シャンリィ。
教会のスクールに通う、たった一人だけの黒人少年。
その少年によく気を配る神父の教師に対し、
確信をもって二人の性的関係を指弾する校長のシスター。
ついにシスターは、学校から神父追放には成功するが…。
はたして神父は潔白だったのか、
それとも性的異常者だったのか…?
宗教の教義に関わることや、人種問題も含み、
実に重いテーマを下敷きに書かれた戯曲である。
 幕開きからしばらくの展開が今ひとつシックリこないで、
かすかに眠気に襲われたが、
話が展開するにつれ、オノレはどんどん舞台に引き込まれた。
四人の役しか出ない、密度の濃さを求められる作品だが、
充分に一見する価値のある舞台だったように思う。
 ずいぶん前、ある女優さんから、
この劇作家の書いた芝居の演出を頼まれたことがある。
「ダニーと紺碧の海」という、
男女二人芝居の、実にハードで衝撃的作品。
残念ながらこの企画は実現しなかったのだが、
シャンリィという書き手は、力のある劇作家だと強く印象に残った。
 今日は下北沢でダブルヘッター。
小劇場・楽園で「ユメの火星航路」(レクラム舎公演)のマチネー。
夜はザ・スズナリで「ひなあられ」(劇団ハートランド公演)を観る。
スズナリの舞台には、独歩プロデュース公演、
「おたまじゃくしはかえるのこ」で主演する、
大西多摩恵ちゃんが出ているのです。
つまり、この「ひなあられ」公演が終わるまで、
独歩の稽古はオヤスミなのであります。

  シニタクナイケド…
Date: 2008-04-17 (木)
 このところ相次ぐ物価上昇。
そんな状況の中で導入された『後期高齢者医療制度』。
しかもその保険料は年金から天引きだと!
ようするにこれからの日本国家は、
年寄りや貧しき連中の「面倒」はみない、てえことか?!
今やこの国は、魂の腐った、
志のない政治家や官僚がのさばっている故か、
次から次に、驚くほど庶民感覚とずれた法律を、
新たにつくったり変えたりしとる。
それでも「一揆」ひとつ起さぬ、我々大人しい国民。
この国ではこの先、オノレのような「カワラコジキ」でも、
はたして老後をおだやかに過ごせるのであろうか?
「コンナクニナラ、シニタクナイケド、ハヨ、シニタイ…」

  心配のタネ
Date: 2008-04-15 (火)
 5月公演のチケットは、
これから「ドドッ!」と申込がくると期待している。
が、去年はサンザンであった。
公演日程をゴールデンウィークにぶつけ、
一日くらいは観劇にあててくれるのではないかと予測したのだが、
予測は外れ、オノレの目標観客動員数を大幅に下回ってしまった。
それに出演者も少なかったからなあ…。
で、今年はゴールデンウィーク明けに公演日程を変更。
ところがヤマノカミいわく、
「みんな遊びつかれて観劇どころじゃないかも…」
 心配のタネはつきない。

  模索の道
Date: 2008-04-12 (土)
 独歩プロデュース公演「おたまじゃくしはかえるのこ」の稽古は、
演出家の意図する舞台の全体像が徐々に明らかになりつつある。
その演出の意を汲んで、役者も手探り状態の役創りから、
克明な役創りにすべく懸命な日々である。
今回のように多くの時間をディスカッションに割きながらの稽古は、
これまでの独歩公演の中でも突出している。
よりよい創造のため、若い演出家を核にして、
老若の出演者・スタッフみんなが知恵を絞り、意見を交わす。
それぞれの役が、漠然とではなく、
鮮明な感情で表現するための模索の道は長い。

  今年の桜
Date: 2008-04-09 (水)
考えに考え抜いて散る桜   麦  人

 東京の今年の桜は、咲き始めから散るまで、
例年にましてオノレの目を愉しませてくれたような気がする。
この二日続きの風雨で、桜並木の遊歩道は薄桃色に染まった。
 オノレの舞台も、この桜のごとくありたい…。

  「難産」の日々
Date: 2008-04-04 (金)
 5月公演「おたまじゃくしとかえるのこ」は、
四月から立稽古になった。
創造するに、まことに手強い作品ではあるが、
若き女流演出家の創造プランを核に、
すこしづつその世界が浮き彫りされつつある。
 それにしても、オノレの演技を客観的に見ている人の目は、
オノレの独りよがりな主観とオソロシク異なる。
この主観と客観の落差を埋め、
より確かな一つの役を生むために、「難産」の日々が続く。