オノレ日記帳

2008年6月の記録



  若き劇作家の皆さま!
Date: 2008-06-24 (火)
 梅雨の晴れ間。
このところ、知人の役者やスタッフの参加する公演が実に多い。
で、あちこちの劇場へ可能な限り足を向けとる。
が、残念ながらこのページで絶賛したい舞台はない。
 オノレも年に一二度、お客様に芝居を観ていただく立場である。
一つの公演を成し遂げる仲間の苦労と難しさは、
それなりよく理解してるつもりだ。
であるからして、覗いてくれる人は膨大な数とはいえんが、
一応公になっとる、この「オノレ日記帳」で、
親しい仲間の公演を批判したり、
論うようなことは、できるだけ避けたい。
明日はわが身…、てえこともあるしな。
 それでも一つ、気になることを記しておきたい。
近頃、オノレの観た芝居に限れば、
若い劇作家の書くドラマに劇的「力」がない。
テレビのホームドラマやバラエティーと、
およそ変わらぬ発想ばかりがきわだつ。
社会や人間をとらえる、
劇作家としての「深い眼差し」が希薄なのだ。
一見、日常的リアリズム風を装い、
軽い会話を達者にまとめ、
客席を安易な「笑い」で満足させるような質の作品が多い。
かような作品ばかり大量生産しとる若い劇作家に、
オノレは余りその将来を期待できない。
(もちろん、オノレに期待してもらっても詮ないのだが…。)
 これから旬の時代を迎える、若き才能ある劇作家よ。
半月、一月で書きあがるような、
老練作家風、手錬な戯曲を次から次に書きまくるな。
創作中、腸捻転を起すくらい苦しんで、
懐貧しくとも、時間をかけ、一語一語深く深く考えて、
井上ひさしや別役実に劣らぬ、骨のある戯曲を書いてくれんか!
 さて、今日の午後は、池袋・あうるすぽっとへ足を運び、
久々に劇団昴の公演を観劇する。
残念ながら、若い日本の劇作家が書いた創作劇ではない。
大シェイクスピアさまの書かれた、
「ジュリアス・シーザー」。
演出はニコラス・バーターという方。
英国王立アカデミーの校長さんだという。

  「派遣社員」
Date: 2008-06-23 (月)
 「派遣会社」「派遣社員」という存在は、
いつ頃から世の中にまかり通るようになったのか?
少なくともオノレの四十代くらいまではなかったような気がする。
オノレの「青春時代」はアルバイトであり、パートであり、
日雇いであり、ニコヨンであった。
「派遣社員募集!」なんぞと、目くらましさせられる、
チト立派そうな名をつけて求人しとるが、
「派遣会社」なんてえものの実体は、
ようするにオフィスの中に入った「手配師」みたいなもんだろう?
そうではないとおっしゃるなら、
派遣会社は派遣する人材をチャンと正社員として雇用し、
その上で派遣を求める企業に派遣すべきである。
保険や年金などの扱いもしっかり手当てすべきである。
それをする気もないくせに、
「社員」なんぞと、マヤカシの扱いをするのはおよしなさい。
 そういえば、以前はマスコミに頻繁に顔を出し、
まことしやかに大言壮語を吹いとった現・厚労大臣。
ちかごろあまり目立たんが、海千山千の官僚に、
すっかりその「毒牙」を抜かれたか?
いずれにせよ、そう長い大臣の椅子ではない。
国民年金や高齢者いじめの悪法ばかりつくらんで、
「派遣会社が集める人材は、派遣会社の正社員として雇用し、
その上で企業に派遣しなければならない」、
てえような法律でも早急に議会に提案し可決してみせてくれ?
さすれば、一つはまともな仕事をした大臣として、
オノレの記憶に、「ボンヤリ」とは残るかもしれん!

  DVDの舞台
Date: 2008-06-22 (日)
 今朝は四時過ぎに目覚めてしまい、プラプラ散歩。
帰宅し、朝刊を読んで、この「オノレ日記帳」のページを開いた。
 東京も昨日あたりから、いよいよ梅雨本番といった空模様。
散歩道の紫陽花は真ッ盛り、それぞれの色と容を競っていたな。
 先週の日曜日、一日がかりで編集した独歩五月公演、
「おたまじゃくしはかえるのこ」のDVDが昨日届いた。
 独歩の舞台を映像に収録する度思うんだが、
劇場においては確かにあったはずの生々しい臨場感が、
映像にすると極めて削がれてしまう…てえこと。
ま、こればかりはいかんともなしがたい。
ちょっとしたカメラの撮影角度や遠近、
マイクの置き位置などによって、
映像で見る舞台の印象は、生の舞台と大きく異なる。
故にオノレとしては、精一杯の慎重・繊細な神経を遣い、
編集現場に立ち会って、うるさく口を挟む。
とはいえ、収録された映像は、
三台のカメラで撮ったものだけだし、撮影ミスもある。
それほど自在に編集できる選択肢があるわけではない。
この限られた映像をアレコレつなぎ、
生の舞台により近い世界にしようと、
演出家になったつもりで、奮闘・努力、致しましたが…。
 さてさて、このDVDを見た出演者やスタッフから、
果たしてどんな感想をちょうだいするハメになるのか?
愉しみというよりは、なんとなくソラオソロシイのだ!

  怒りの沸点!
Date: 2008-06-17 (火)
 我々芝居を生業とする者の多くは、
(オノレの場合、ナリワイになっとらんが)
常に客の目線を大切に考え、
それを念頭においての芝居創りをする。
これはもう習い性になってしまうほど、
我々の創造に欠かせぬ大切な意識だ。
 翻って、政治を司る「公僕」ならば、
公僕ではない「芝居や」と比べ、
民への目線のとらえ方は、より厳しく問われる重大事だ。
が、あにはからんやこの日本では、
市井の民への目線をもたぬ政治家ばかりが跋扈しとる。
彼らは、ご立派な邸宅や官舎に居住し、
公用車で送迎され、国土を蝕む利権にむらがり、
我々の税金からたっぷり報酬を「サクシュ」しとる。
こんな「公僕」ではない「政治や」が、
大蛇にじわじわ絞め殺されるていくような、
苦しい庶民の立場に立つわけもなく、
その現実を深く真面目に理解するはずもない。
 おりしも勃発した岩手・宮城内陸地震。
大地が亀裂し、民が怒る。
その怒りの沸点が大バクハツするのはいつの日か?!

《蛇足》
 昨日、都内某所で、
「公僕」である自民党代議士のOとMが、
芸能人のごとく何百人もの連中を招待し、
マスコミに取材され、シアワセに結婚をしたそうな…。
他人の私事のヨロコビにとやかく言う気は毛頭ない。
が、お二人は国税から報酬を得ているリッパな公僕。
(辞書によれば公僕とは、公衆に奉仕する公務員。)
 お二人さんヨ。結婚なんざ内々で済ませ、
その費用を、ミャンマー・四川・宮城など、
まことに不幸な被災者にカンパすれば、
それこそマスコミは「美談」として大いに報道し、
次の選挙で、お互い「立派な公僕」として、
当選確実だったかもよ!

  ああ、日本!
Date: 2008-06-09 (月)
 秋葉原で通り魔、無差別殺人。
七人の方が亡くなり、犯人は二十五歳の若者…。
この若者は、「生活に疲れてやった」、
「世の中がイヤになった」と言っているらしい。
日本社会の根底に刻印された、恐ろしい断層と亀裂。
今や街へ出れば、豹のごとき眼で四方を警戒しつつ、
他人を疑いながら歩かにゃならん世の中か!
 一方、そんな世間に「君臨」しとる国会では、
「後期高齢者保険」の廃止を認めない福田首相に、
遅まきながら民主党が、
近々「問責決議案」を参議院で可決させる方向とか。
一方、自公与党はこれに対抗し、
首相の「信任決議」を衆議院でするという。
たく! その内閣の信任を問うなら、
選挙で議席を失うことにビクビクしとる与党のお仲間にではなく、
即刻解散し、堂々我々国民に問うべきだろう!!
特権と保身しか脳裏にない、
だらしない身内に信任していただくような茶番劇はオヨシナサイ!
(沖縄県議選では自公与党が負けて、野党が議席の過半数を獲得)

  書きにくい感想
Date: 2008-06-07 (土)
 昨夜は三鷹・武蔵野芸能劇場。
伽羅のリーディングドラマ「智恵子抄」の観劇。
 伽羅は独歩の舞台に深くご縁のある役者、
岡部政明、をはり万造、森うたうの三人がメンバーの朗読グループ。
しかも今回は、やはり独歩の舞台と縁の深い側見民雄氏も参加。
彼が演出を担当し、草野心平役で出演もしとった。
 森うたうは、今年十二月の独歩公演に初出演していただく。
「ブラインドの視界」という作品の主役で、なかなかハードな芝居。
彼女の役は、成長企業の秘書役なんだが、
その会社の社長役をするのは、をはり万造。
つまり昨夜の「智恵子抄」で光太郎と智恵子を演じた二人が、
半年後、やはり同じ舞台でガブリ四つを組む。
つまり伽羅の舞台は、オノレと深く親しい役者仲間ばかり故、
このHPにその意見を正直に告白するのはチトシンドイのであるが…。
彼らへの親愛と尊敬をこめて、チョッピリ辛口の感想を書きたい。
 さて、オノレの「アイスル」この四人の、
役者としての技量、表現力は、あえて断るまでもない。
立派に「ゼニ」のとれる方々である。
昨夜の舞台も、他のさまざまな朗読会やリーディングに比べても、
彼らの表現レベルは決して劣らず、
否、かなり質の良いものだと断言できる。
が、そういう彼らであるがゆえ、
彼らの舞台を観るとき、オノレの期待はかなり大きい。
だからこそ、彼らの創りだす光太郎・智恵子の世界から、
ただ「語る」表現技術だけではない、
人間ドラマとしての「何か」を生み出す努力に挑戦し、
発信してもえんかったかなと…、オノレは思う。
 全体として「ソツ」なくまとまり、
たぶん「智恵子抄」ファンには、
それなり満足のいく舞台だったかもしれん。
ひょっとして、ただ朗読するだけの世界なら、
もうそれだけで充分ともいえないこともナイ。
(泣いてる女性もチラホラおった)
しかし、「リーディング・ドラマ」として、
オノレの観た昨夜の舞台は、
光太郎の詩の朗読を核に進行する、
あまりドラマチックな構成・演出ではナカッタ!
そのせいか、光太郎、智恵子にもあったはずの修羅の部分が薄く、
破綻も破綻に見えない、甘いきれいごとの関係ばかりがきわだつ。
それはおそらく、二人の出会いから智恵子の死までを、
ダイジェスト風な世界でまとめてしまった構成台本の、
基本的に抱えざるを得ない弱点なのかもしれん…。
 普段、オソロシイほど華も毒もある、
個性豊かな伽羅のメンバーである。
よい意味、もっと大胆に、批判をおそれず、
「独善」的構成と表現にあふれた舞台にすることは不可能だったか?
 光太郎の詩や生き方、狂ってしまう智恵子との夫婦仲に、
かつて大いなる関心をもち、その著作や評論を読んだ者の一人として、
オノレは今回、生意気にもそんな感想をもってしまったのであるが…。
 オユルシアレ!

  12月は追悼公演!
Date: 2008-06-02 (月)
 およそ三十五年間も、オノレが身内のように、
親しいお付き合いをさせてもらった劇作家・安保廣信さん。
去年の三月、彼が七十五歳で亡くなり、すでに十四ヶ月。
その追悼公演を、いよいよこの十二月にオノレは実現させる。
 上演するのは、「ブラインドの視界」「夕暮れどき」(原題「月賦」)という、
安保さんが三十代に書き、高い評価を受けた骨太の二作品。
独歩プロデュースとしては、
別役実ではない劇作家の戯曲をはじめて上演することにもなる。
で、二作品ともオノレの演出なんだが、
よほどしっかり準備して稽古に臨み、オモロイ舞台を創らんと、
生前、いろいろご迷惑をかけたあの世の作者に申し訳ない。
幸い二作品とも、なかなかよいキャスティングを組めた。
後は演出さえチャンとしていればなあ!