昨日に続いて井上ひさし。 紀伊国屋サザンシアターで上演中のこまつ座公演、 「闇に咲く花」(作・井上ひさし)を観劇。 すでに何度も上演されている舞台の再演らしいが、 オノレが観るのは初めて。 昭和23年の東京神田。 焼跡に残った愛敬稲荷神社が舞台。 闇屋をしている善良かつチト強かな神主。 突然帰還してくる、戦死したしたはずのひとり息子。 この親子を核に展開するドラマだ。 息子は将来を嘱望される学生野球のエース。 だが実は、境内の杉の木の下に置かれていた捨て子。 そして神主の元には、闇の売買を手伝う戦争未亡人やら、 米進駐軍占領下の巡査やら、 息子とバッテリーを組んでいた親友の神経科医やら、 井上作品ならではの個性溢れる人物たちが登場する。 いやはや、かつてこまつ座の初演、 「父と暮らせば」を観たときに負けず劣らず笑って泣いた。 総じて役者がよかったし、栗山民也の演出もよい。 で、とにかく戯曲が優れてオモロイ! 旧いしきたりやら、思考やら、矛盾の中で、 生き残りに必死な小神社という存在。 その存在を逆手にとり、鋭いアイロニーを駆使し、 客を笑わせつつ戦争の酷さを浮かび上がらせる。 しかし笑いを含んだその戦後の日常的風景は、 国や国民の戦争責任のとり方についてまで、 自ずと客席へ痛烈に問いかけてくる。 とにかく理屈っぽい、小難しい台詞抜き。 戦後を必死に生きる庶民の、 ありがちな姿と会話を通して問いかけてくるのだ。 このリアルな問いかけによって、 普段過去の歴史を忘れがちなオノレの胸は、 錐で突かれたようにキリキリと痛む。 井上ひさし以外の劇作家で、 今、こんなスタイルの戯曲で客を堪能させることができるのは、 たぶん鄭義信くらいのもんだろう…? まざまざと、井上作品の真骨頂を見せつけられた舞台!
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