寝返りをうつたび秋は深まりぬ 麦 人
歳を重ねるにつけ、オノレの寝付きはどんどん悪くなる。 近頃では、床について五分以内で眠りにつくことはまずない。 調子の良いときでも平均十分前後はかかっちまう。 ダメなときは二三十分、ひどいときは一時間も二時間もである。 ま、それほど眠れぬときは、 男らしく眠らしてくれぬ敵との闘いを放棄、 床を抜け出し、堂々と酒を飲む。(なぜ堂々なんじゃ?) この寝付きの悪さが何に起因しているのかよくわからんが、 人生を思い悩む癖がある…ためではない。 ま、自慢にもならんが、楽天的性格という点においては、 オノレは人並み以上に極楽トンボだという自信がある! つるつる考えてみるに、(つるつる考えんでもわかるんだが) オノレのおふくろが不眠症で、よく睡眠薬を服用しとったから、 たぶん彼女から受け継いだDNAが最大の要因であろう。 しかし、如何な極楽トンボとはいえ、オノレも一応、 「芸術分野の世界」に生きとる人間であります。 オノレの舞台に関わることを、ふと考えこんだりすると、 ときにセンサイに悩み、ときに大いなる創造の挫折に憂い、 眠るタイミングを失っちまう傾向がナイとはいえない! さて、ヤマノカミはニクタラシクなるほど寝付きがよい。 たとえオノレより遅く床に着いても、 不眠で右に左に寝返りをうち、悶絶しとるオノレを尻目に、 「お先にシツレイ」とばかり、さっさとイビキをかきはじめる。 ひょっとしてこいつは、 オノレに勝る「極楽トンボ」なのかもしれんぞ?!
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