オノレ日記帳

2008年10月の記録



  ボジティブな稽古
Date: 2008-10-29 (水)
 12月独歩プロデュース公演の稽古は、
その稽古始めから出演者・スタッフの気力が漲り、
オノレも目を疑うほどである。
おおよその出演者が入念に事前の準備をしとったことがよくわかり、
演出としてボジティブな稽古のできるありがたい状況だ。
彼らのこの姿勢に応えて、オノレも適確な要求とダメを出し、
より確かな作品世界を構築せにゃならん。
 13時から20時までの稽古時間がアッという間に終わる!

  残念!
Date: 2008-10-27 (月)
 演劇集団・円が、鄭義信の新作、
「孤独から一番遠い場所」を上演している。
鄭義信ファンのオノレとしては、
何をおいても観劇したい舞台であったが、
行ける日が決まり、鄭ちゃんにチケットの打診をしたらもう満席。
わずかに11月4日の追加公演にいくらかの残席があるだけとか…。
その日はこちらも12月公演の稽古があり、
抜けるわけにもいかんので、今回の観劇は泣く泣くあきらめた。
 声優として人気のある女優、
朴路美(路の左には王がつく)主演なので、
チケットの売れ行きもよかったにちがいない。
 どんな内容か、今は知る由もないが、
そのタイトルからして、何だかゾクゾクしてくるなあ…。
まことに残念!

  《驟雨の日暮れ》
Date: 2008-10-26 (日)
《驟雨の日暮れ》

驟雨に
妻と駆け出し滑って転んだ
わたしの両手を
妻の両手が引き起こす

誰かが
誰かをささえ
ささえているその誰かを
また誰かがささえている

この人の吐く息を
わたしが吸い
わたしの吐く息を
この人が吸う

年々
こんなささいで
小さな絆の一つ一つが大切だと
身に沁みてわかってくる

少しの照れと
恥ずかしさの中で
わたしはよろよろと立ちあがり
笑って妻の手を放す

ああ
歳を重ねるとは
こういう絆の深まりかと
ちょっぴり思う

ふと
過去がよみがえり
苦い感傷に襲われながら
右足をさする驟雨の日暮れ

  一つの記憶
Date: 2008-10-25 (土)
 オノレの育った吉祥寺の街は、
今や休日ともなればドエライ人混みで、
それほど足を向けたいと思わん。
しかし昭和二三十年代、
木造の吉祥寺駅二階通路の窓からは、ほぼ街全体を見渡せ、
井の頭公園の鬱蒼とした森が一際目立った。
 オノレが小学生の頃、
井の頭公園の森や池は、オノレの冒険の地であり、
休日の昼間はワクワクと、しかしやや緊張しながら、
公園の探検によく出かけた。
 その探検の行き帰りの道に、
西洋風ホテルのような、まことに立派な邸宅があった。
二千坪くらいの敷地があったのではなかろうか?
否、子供の目から見た広さであるから、
実際はそんなにはなかったのかもしれん。
 敷地全体を高い石塀が囲み、巨大な赤錆色の鉄柵門扉。
しかしオノレは、その門扉の開くのを目にしたことがない。
今思えばまるで刑務所のような石塀と門扉であった。
 鉄柵の隙間から中を垣間見ると、
広大な邸宅と芝庭をとりまくように、立派な樹木の林があった。
 戦争の記憶もまだ生々しかったであろう昭和三十年代はじめに、
ガキのオノレは、ベルイマンの映画に出てくるような、
チエホフの芝居にあるような風景を見ていたような気もする。
なぜかこの屋敷のことを思い出すたび、
オノレの記憶のイメージは「桜の園」とダブルのだ。
 さて、この大邸宅のお嬢サマがオノレと同じ小学校。
四年生のとき、同じクラスで机を並べた。
ところがその年、オノレは父の所属する劇団・前進座の、
「寺子屋」という芝居の子役について全国を巡演しとった。
であるからしてこの一年、小学校は欠席ばかり。
大金持ちのお嬢サマと一言の会話もできず、
親しくなる絶好のチャンスを逸した。まことに残念…。
大邸宅の主が、どない世界の何者であったかわからん。
(カマクラ…てえような名前であった)
しかし一年休まず学校へ通い、
もし彼女と楽しく語りあう日々を送れば、
ひょっとしてオノレも「逆玉」…ナンチャッテ!

  チンチン電車
Date: 2008-10-23 (木)
 チンチン電車・明星学園・ゴキゴキゴキ…。
昨夜の夢をかいつまんで表現すればこんな感じかな。
 オノレはチンチン電車(多分都電)の運転手。
正しい名称は知らんが、L字になった加速器ハンドルを左手に握り締め、
180度くらいグリグリ・ゴキゴキ廻したり戻したり…。
そう、あのハンドルのゴキゴキゴキという音が、
オノレは子供の頃、たまらなく好きであった。
 実は今月の頭に広島へ行き、のんびりと市電に乗った。
そしてあの昔懐かしいゴキゴキの音をたっぷり聞いたのである。
昨夜の夢はこの広島体験によって見たにちがいない。
とにかく広島には地下鉄がなく、
運賃の安い、いろいろな種類の市電が大いに幅を利かせとる。
 さて、オノレの運転する夢のチンチン電車は、
「明星学園前」という駅に停車した。
この学校は、知る人ぞ知る「山びこ学校」の無着成恭先生もいた学校。
オノレの故郷、井の頭公園の側にあって、(今もあると思うんだが?)
当時は、それほど頭の出来が良くなくても入れたらしい。
とにかくとても自由な校風だと聞かされとったから、
もし高校に行けるものなら、この学校の高等部に入りたいと、
中学時代のオノレは、チト憧れたことがある。
(制服でない、お嬢さん風、可愛い女子高生もたくさんおったしな…)
 東京も荒川線だけでなく、アチコチ都電を復活させたらどうなんじゃ?!

  “創造の発見”
Date: 2008-10-22 (水)
 芝居の稽古で大きな愉しみの一つは“創造の発見”である。
裏を返せば、その発見が少ない稽古は苦しい。
 “創造の発見”の多くは、
台本に書かれた台詞やト書により生まれる。
しかし台詞やト書に書かれてなくても、
その舞台の背景にある時代状況、風土、
役のキャラクターなどにより導き出される発見はたくさんある。
例えば、台本には指定のない「個性的通行人」を、
上下へ一人歩かせるだけで、
客のイマジネーションは大いに刺激されたりもする。
 ま、かような発見には、結果として見当ちがいだったり、
陳腐なものであったりすることも多いんだが、
当てずっぽうの発見でも、一度稽古場で試してみる価値はある。
で、うまく嵌ッた場合、驚くほど全体に厚味が増したり、
ガラッと役の個性が変わり、生き生きとし、
俄然、舞台が面白さを増すこともある。
 演出も役者も、台本の余白に埋っている、この“創造の発見”を、
宝物探しをするように発見し、
懼れず、恥じず、稽古場にどんどん「展示」すべきである!

  確かな手応え
Date: 2008-10-17 (金)
 昨日、12月公演の稽古初日。
本読みであったが、出演者の皆さん、
事前の役創りを、それぞれ相当しっかりされとったようで、
初稽古とは思えんほどの出来であった!
演出のオノレは、必ず見応えのある舞台になると、
確かな手応えを感じて嬉しかった。
 稽古後の親睦会も大いに盛り上がり、
今朝はチト二日酔い気味で頭が痛い…。

  いざ出陣 !
Date: 2008-10-16 (木)
快晴の秋空
富士山が見える
稽古初日の朝
儀式はない
いつもと同じウドンの朝食
「虚実皮膜」
近松門左衛門の言葉が頭に浮かぶ
いざ出陣 !

  稽古が始まる !
Date: 2008-10-15 (水)
 いよいよ明日から、12月・独歩プロデュース公演、
「月賦」「ブラインドの視界」(安保廣信追悼)の稽古が始まる !
これからおよそ一月半、初日の舞台が開くまで、
オノレと役者とスタッフ、関係者の総力を挙げて、
豊かな創造的実りを得るため、汗を流してタネをまき畑を耕す。
はたしてこの創造の畑からどんな作物が育ち、お客様の元に届くか?
 ハラハラドキドキ…。厳しくも愉しく、緊張の日々が続く !

新米を噛んで舌噛む台詞かな   麦  人

  先週の週末
Date: 2008-10-13 (月)
 先週の週末、金・土と観た二つの芝居はまことによかった!
金曜日は独歩の舞台にも二度ほど出演し、
たいへん好演してくれた蓮池龍三君の芝居。
一年ほど前に彼が上演した、
「ダニーと紺碧の海」(作・ジヨンパトリック・シャンリィ)の再演。
初演のさいは、彼に手厳しい感想を言ってしまったオノレであるが、
今回の再演はまことに素晴らしかった!
一つの作品と役にとことん惚れこみ、
飽くなき挑戦をする役者の一念をまざまざと見せつけられ、
オノレは強く感動し、カーテンコールで熱い拍手を送らせてもらった。
 土曜日は前進座公演、鶴屋南北・作、
「解脱衣楓累」(げだつのきぬもみじがさね)。
オノレは南北の舞台を観ると、
別役実とまた異なる、世と人の究極の不条理をいつも感じる。
外連(けれん)にあふれた舞台の中で、
次から次に繰り広げられるその不条理は、
「そんなバカな・・・」と思わせる出来事の連続であるが、
人の内にひそむ俗やら欲やらしがらみやらを、
ふと衝かれているようで空恐ろしい。
 オノレの身内の役者三人がメインの役で出演しとって、
三人それぞれガンバッテおりました!
(トテモ カレラニ カナワンガ オノレモ マケテ オレンワイ)

  オノレの脳は…
Date: 2008-10-10 (金)
株大暴落 ! (一万円割れ)
日本人の物理・化学の学者四人、「まとめて?」ノーベル賞受賞 !
俳優・緒方拳死去 ! (享年七十一歳)

世界は日々喜怒哀楽に満ちて千変万化し
オノレの脳は忘却に忙しい…

  子々孫々の不幸
Date: 2008-10-09 (木)
ひんやりと目醒めて夢は秋の闇  麦  人

 今、世界はとんでもなく恐ろしい時代になりそうな気配。
戦争は経済だという。
既に泥沼の紛争が続いている地域だけではなく、
さらに新たな地域紛争が起らねばよいが…。
米国・ロシアといった大国の関わらぬ紛争は余りない。
大国の利害に追従し、間違っても我々の国が武器を取ってはならん。
改めて、戦争放棄を誓った日本国憲法九条、
「戦争の放棄」「戦力の不保持」(もはや形骸化しとるが)、
「交戦権の否認」を守り抜かねば、子々孫々の不幸となろう!

  こけるのは勝手だが…
Date: 2008-10-07 (火)
 世界も日本も、経済はドエライことになっとるようだ。
世界大恐慌にもなりかねん状況だとか…。
金融システムの崩壊も株の暴落も、
オノレにはおよそピンとこない世界。
しかしこの事態が庶民の暮らしを直撃し、
ますます深刻な不況になるとしたら、
今でも青息吐息で生活しとる我々はどないすればええんじゃ!
 これまでの自公政権に優遇されてきた大企業や金持ちが、
やりたい放題の投機や資産の運用でこけるのは勝手だが、
その付けを庶民にまわさないでくれたまえ!!

  新たな創造に・・・!
Date: 2008-10-02 (木)
 半月後、いよいよ12月独歩プロデュース公演・安保廣信追悼、
「月賦」「ブラインドの視界」の稽古が始まる。
プロデューサーとして、演出として、出来得る限りの準備は整えた。
 振返れば去年三月、
この二作品を書いた劇作家・安保廣信さんが逝去。
翌日の弔いの日に追悼公演をやろうと決意したオノレであった。
が、それから今日までのおよそ一年半、諸々紆余曲折があり、
正直、人に語れぬシンドイ過程もあった。
で、ようやく上演の骨格が固まり、
今、オノレなりに舞台化する自信もわいてきている!
 上演する二作品は、四十年も前に書かれたものであるが、
もちろん錆びついとらん。
いずれも今日的・普遍的テーマをもった内容であり、
味も葛藤もある、しかし創るに手強い人間ドラマだ。
幸いなことに今回の舞台も、
オノレが望んだ役者・スタッフがそろった。
 終わって悔いない、新たな創造に挑戦スルゾ!