オノレ日記帳

2009年12月の記録



  「父と暮せば」は・・・
Date: 2009-12-22 (火)
 今年も残すところ十日である。
ほんとうに今年はイロイロあった。(毎年あるが)
とくに去年に続けて、年二回のプロデュース公演を実現できたことは、
オノレの気持ちにとっては至福の一年であった。
で、気持ちの至福と裏腹に、経済的負担はいよいよ厳しい。
もはや個人で、(独歩プロデュースで)芝居を打つのは限界といってよい。
 それでも来年八月の「父と暮せば」だけは、
何としても、血反吐を吐いてでも成し遂げにゃならん。
そしてこの《独歩・さよなら公演》で、
これまで独歩を応援してくれたすべての方々に、
八年に渡って積み上げてきたオノレの成果と真髄を観てもらいたい !
井上ひさしさんの書いた「父と暮せば」は、
まさにオノレが最後の公演として上演するにふさわしい作品である !!
(チト大言壮語しとるような気がしてきてフアン、いや、不安になる)

  一週間後の感想FAX
Date: 2009-12-19 (土)
 独歩十二月公演が終わって一週間・・・。
昨夜、オノレにとってはまことに嬉しい、
率直で貴重な感想FAXを頂戴した。
無記名なので、どこのどなたかわからんのが残念だが、
宇都宮のセブンイレブンから送信されとる。
 遠いところから観にきていただきありがとうございました。

12月12日(土) 「海ゆかば水漬く屍」の感想

 心配されること、してくれる人が一人でもいること、
それがとても幸せなことであることを忘れてはいけないのだと、
改めて実感した舞台でした。
人間は決して心を閉ざしてはいけないのだと、
強く学ばせていただきました。
「海ゆかば水漬く屍」という作品を、私が一度の観劇で、
どの程度理解できているかは正直全くわかりません。
しかし好きな相手、嫌いな相手によって対応が変ってしまったり、
好きなのに相手の優しさに甘え、全て許されると錯覚して、
傍若無人な態度をとってしまったり・・・。
登場している人物たちほどあからさまではなくても、
ごく当たり前の人間らしい感情がつまった、とてもあたたかな舞台でした。
 コミュニケーション手段が手軽なメールになりつつある現在ですが、
やはり顔と顔を合わせての会話っていいなあと、しみじみと思いました。
人間らしい感情というのは、一人では味わえないものなんだと、
気付かせていただいたように思います。
 とても面白い舞台でした。
鍋焼きうどんが美味しそうでした。
 難しいからこそ、ふとした瞬間に思い出して何度も考えます。
良いお話だった・・・で終わるのではなく、
答えが見出せない難しさに悪戦苦闘するのです。
それがまた楽しい。
 それでも感想を書きながら思い出すのは、
全体を通した難しいストーリーではなく、
心優しき傷病兵2の元気な声やひょうきんな動きだったり、
傷病兵2をバカとしかりつける傷病兵1の独尊的な態度や声だったり、
自由な夫婦の珍妙でおかしな会話であったりするのです。
ワンシーン、ワンシーンが本当に素直じゃなくて、
面白い舞台だったなぁと思います。
とにかく自然な会話は、演じているとは思えぬほどでした。
 傷病兵1・2には、しっかりと友情が芽生えていたし、
男と女は確かに夫婦でした。
できるならもう一度観たい舞台です。
 大変素敵な時間をありがとうございました。

 一期一会の生舞台・・・。
12日の土曜日、少なくともお一人、独歩の舞台をかように評価し、
この一週間、考え続けてくれたお客様がいてくれた !!

  二つの感想 !!
Date: 2009-12-15 (火)
 「海ゆかば水漬く屍」の舞台が終わって二日・・・。
オノレの頭の中はマシュマロのようになっちまって、
何を考えてもとりとめがなくカタマラン。
 さて、今回の舞台も多くの感想を頂戴した。
手厳しい辛口の(でも多分「愛」に満ちた)感想もいくつかあったが、
ゴマスリとは思えん、大変肯定的で、
今回の舞台の本質を観てくれているような感想も多く頂いた。
そのうちの二人の方の感想をここに掲載させていただく。

麦人さまへ。
 
命は、ひとつ  人生は、一回
だから、命を捨てないようにね
慌てると つい ふらふらと
お国の為などと 言われるとね
青くなって 尻込みなさい
逃げなさい 隠れなさい・・・・・

 なんだか、こんな加川良の歌を思い出しましたよ。
戦争を知らない子ども達のひとりだった僕。
でも、通っていた小学校の壁面や窓枠には、
機銃掃射の痕が残っていたし。
電車に乗ると、
日曜日なんかには傷痍軍人が二人一組で乗り込んできました。
義足を外して座る人と、アコーデオンで演奏する人。
それが、恐ろしくて・・・・。
そんな記憶が甦った一編でした。
重々しい題材を、言葉のマジックで引き込み、そして衝撃を与える。
こんな作品を書く人も凄いけど、
それを、すっかり独歩ワールドに仕上げたことも凄い!!
 苦しむ事で、生きてる事を感じる。
さぁて・・・僕にはできないでしょうねぇ。おそらく。
自分の身に降りかかってきた出来事に精一杯で・・・。
生死の境を見てきた人にしか、感じる事のできない世界。
それを、いとも簡単に表現してしまうって事は、
そらぁ、凄い事です。
久しぶりに言葉が出なくなってしまいました。
 実は、僕は霊感が強い方で。と、言うか・・・、
強くなってしまった、とでも言いましょうか。
時々、この世のモノではない方々と遭遇します。
 二年前の夏。
いなげやの二階の休憩所で本を読んでいたら、
僕の視界の端で何かが蠢く。
屋上の駐車場から続く階段を、
上半身だけの男の人が這って降りてくるではありませんか。
あくまでも視界の端での出来事ですが。
僕が、はっとすると、
とたんに僕の方をじーっと見たかと思うと、近付いてきました。
上半身だけで這いながら。
あれは、未だ死んだ事に気付いていない方か、
この世に未練がある方か。
いずれにしても言いたい事が山ほどあったのかもしれません。
おい、お前。苦しいのはお前ではなく、
俺の方なんだよ。わかってるのかい?
そう考えると、とにかく、生き続けよう!
なぁ〜んて思いました。
僕なんか、まだまだ甘ちゃんじゃん。
 そして、今日の舞台を、
カウンターパンチをくらったようなショックのまま、
その余韻を体中に感じながら駅に向かって歩いて行くと・・・。
大勢の行き交う人々、走る車、町に流れる騒音とクリスマスソング。
すっかり現実に引き戻され。
また、明日、自分の身に起こるであろう現実に、
ものすごい重力を感じながら帰途についたって訳です。
本当に良い芝居を見させていただき感謝してます。
と、同時に自分自身に言い聞かせました。
大地にしっかりと足を踏ん張って生きろ!(か、かっこいい!)
とにもかくにも、本当に今日は有難うございました。
次の舞台も楽しみにしています。いや、ほんまに。

渡邊 翔

「海ゆかば水漬く屍」 平成21年12月12日舞台観劇感想

 今回の舞台では、
若者を導きながらの麦人さんの演技がとても興味深いものでした。
どうしたってもどかしくなる新人の演技を、
大きく受け止めながら我も通す……。
時々入る激しい演技は場を引き締める一喝のようにも感じられて、
ある意味微笑ましく見させて頂きました。
主演級の役柄で初舞台を踏むことは、
新人にとってかなりのストレスだと思いますが、
素直によくやっていたと思います。
一緒に見ていた母などはそれが気になって不満だったようですが、
そこばかりに注目するのは酷かなと思います。
カーテンコールの時に、
苦い顔をしていた新人の方の表情がとても印象的で、
もし悔しさを感じていたのであれば、
将来良い俳優になれるのではないでしょうか。
 舞台の内容自体は別役作品らしいもので、
いつものように拝見しながら色々なことを考えました。
これまで麦人さんの舞台で見た別役作品の中では、
現代劇(現在に近い時代?)の方が、
よりエッセンスが濃厚で笑いや皮肉が分かりやすかった気がします。
戦後すぐの混沌を描くとなると、
どうしても暗い影ばかりがクローズアップされてきて、
そんな世界でも逞しく前向きに生きる人がいた、
という部分がもっと見たくなってしまいます。
過ぎた時代の悲劇について、
現代を生きる自分は肯定も否定も出来ません。
しかし、感情の部分だけでひたすら同情したり、
あえて見ないようにするのは、
その時代を精一杯生きた人に対して失礼だと思う気持ちもあります。
自分にやれることは、出来るだけニュートラルな気持ちで、
色々な角度からその時代を知ることだと思います。
不幸だったのか、幸福だったのか、頑張ったのか、怠ったのか、
それらを判断するのは僕ではなく、
その時を生きた本人だけの権利なのだろうと、
舞台を見ながら思いました。
 余談ですが、以前の舞台で実際にタバコの香りがしたのと同様、
鍋焼きうどんの香りがしましたが、
これぞ舞台の醍醐味だなーと思いました。
お腹が空いて集中できなくなる人もいたかもしれませんが(笑)。
 次回でセルフプロデュースは休止されるそうですが、
舞台での活動は続けて欲しいです。
そしていつかまた、
麦人プロデュースの舞台を再開できることを願っております。
保村匡俊

  「海ゆかば水漬く屍」、千秋楽 !
Date: 2009-12-13 (日)
 2009年の掉尾を飾る(飾っとらんか?)、
独歩プロデュース「海ゆかば水漬く屍」公演、千秋楽 !
 今回のオノレたちの創造した舞台が、
どれだけ観てくれた多くの方の心をゆさぶったか・・・。
すべてのお客様の心の中をのぞくわけにもいかんので、
その判断は大変にムツカシイ。
オノレの耳には大いなる評価も、無難な評価も、
チト辛口の評価も入ってくるが、それは親しい方々の範囲でである。
それでもオノレは、今回の舞台が、
良くも悪くも、独歩の上演する最後の別役作品にふさわしい、
「独歩ならでは」の、「独歩らしい」舞台になったと確信している。
 本日最後の一回、オノレらしい演技を全うしたい !!

  悔いなき舞台を !
Date: 2009-12-12 (土)
 昨日は一日冷雨の降りしきる中、
昼夜で百人をこえるお客様が、
「海ゆかば水漬く屍」を観にきてくださった。
今日・明日の天気予報は晴れ。
客席はこの土日、たぶん満席になるだろう。
そして残すところ二回の舞台限りで、
独歩が別役作品を上演することはもうない。
オノレは来年八月、
「父と暮せば」(作・井上ひさし)の上演を最後に、
独歩解散の決意をしたからだ。
ま、独歩にいるのはオノレとヤマノカミ二人だけ。
解散というほど大そうなカイサンではない。
ようするに我々夫婦が多くの役者やスタッフに声をかけ、
制作・プロデュースし、観客動員することは、
「昨今のご時世厳しく、もう不可能なフトコロ事情になった」、
ということなのであります・・・トホホ。
 とにかく残された二日間、
オノレの精一杯、悔いなき舞台を務めたい !!

  役者に憑依するもの・・・
Date: 2009-12-11 (金)
 劇場の空間には、
舞台の役者と客席によって生まれる、
その空間だけの、その芝居だけの空気がこもり漂う。
その日のお客さんによってつくられる空気は、
役者の表現に大きな影響を与えるし、舞台の命運をも左右する。
客が時を忘れて舞台に集中し観ている時の空気は凛としており、
客が時を気にして退屈している時の空気は弛緩する。
 客席が舞台へ集中する密度の濃い空気をつくると、
その空気にこもる芝居の「何か」が、
(例えば、稽古場でなかなか見つけられなかった、
その創造に必要不可欠なスパイスのようなもの)
役者に憑依するような瞬間がある。
そしてときどき思いもよらぬよい演技をするというか、
一瞬のうちにこれまで出来なかった表現が出来たりする。
しかしこの「何か」は、
稽古過程で、もろもろ準備不足の役者に憑依することはない !

  早中日。
Date: 2009-12-10 (木)
 現在上演中の独歩プロデュース、
「海ゆかば水漬く屍」の公演期間は六日間。
今日のマチネーが終われば早中日。
これまでの独歩公演はだいたい十日間くらい。
たった四日間少なくなっただけなんだが、
感覚的にはずいぶん短いというか、
アッという間の千秋楽という感じである。
 初日から昨日までの客席の入りは定員のおよそ六割。
金曜日の夜と土日のマチネーは満席になりそうな気配だが、
金曜日の昼がサミシイ・・・。
明日は天気も崩れそうなのでチト心配だ。

  初日の舞台は・・・
Date: 2009-12-09 (水)
 「海ゆかば水漬く屍」、初日の舞台は無事に終った。
頂戴したカーテンコールの拍手には、熱い心がこもっていた。
終演後の多くのお客様の表情に、
とてもよい笑顔が浮かんでいたようにオノレは思う。
 代役から本役になった傷病兵1役の野川雅史君。
彼に対するお客さんの評価もなかなかよい。
ホンマに彼は、初舞台とはとても思えぬ度胸と演技でガンバッタ !
この彼に拍手してくれたお客様がたくさんいらした。
昨夜の舞台が終わり、オノレにはそれが一番嬉しかった。
 野川君、お互い千秋楽の最後の最後まで、精一杯ガンバロウゼ !!

  初日だ !
Date: 2009-12-08 (火)
 「海ゆかば水漬く屍」、いよいよ初日。
今日の昼にゲネプロをして、
夜の7時には、我々の創った舞台に対するお客様の「審判」が下る・・・。
 オノレのごとき不純物の塊のような男は、
なかなか「止水明鏡」のごとき心にはなれんが、
ここまで皆と積み重ねてきた稽古場の真摯な創造を信じ、
可能な限り無心に、「うまくやろう」なんぞと思わず役に生きたい。
 深く晴れた冬空の初日だ !

  稽古打ち上げ。
Date: 2009-12-06 (日)
 本日で稽古打ち上げ。
今日も含めて、出演者・スタッフ全員、
ここまで可能な限りの持てる力を発揮し、
やれるだけのことはやったと、オノレは確信している。
後は観ていただくお客様の評価を謙虚に受け入れるしかない。
 明日は搬入・仕込みを終えて場当たり。
そして明後日、一時からゲネプロをやり、
その夜、いよいよ初日の本番を迎える。
 とにかく千秋楽の舞台が終わるまで、
これからハラハラ・ドキドキの毎日が続く・・・。
 そしてオノレは今、オノレの役と共に、
「生きよう・・・。生きつづけよう !」とだけ、思っとる !!

  初日まで後四日。
Date: 2009-12-04 (金)
 「海ゆかば水漬く屍」、初日まで後四日。
稽古場での稽古は今日を入れて残すところ三日間。
ここまで、いくつもの頭の痛くなる事態が生じたが、
それを何とか乗り越えることが出来たように思う。
この出演者・スタッフ全員の結束と努力の結果、
我々の舞台は、なかなかオモロイ作品になったと、
オノレは今確信しているのだが・・・果たしてお客様の評価は !?
 我々の舞台に、「全てよし」という終りはないが、
残された三日間の稽古によって、
ここまで積み上げてきた創造をさらに深め、
まだ見落としているかもしれんダメなところを可能な限り発見したい。
多分、それでも公演終了後、ダメだっところに改めて気づいたり、
反省することが必ず出てくる・・・。
それが「これでいい」ということのない役者の世界であり、
我々の「芝居創り」というものなのだから・・・。

  十二月です
Date: 2009-12-01 (火)
いよいよ今年も十二月です
毎年毎年何かが異なる十二月です
また一つ歳をとっての十二月です
逝った友人とお酒を飲めない十二月です
芝居をして 芝居を観て
泣いたり笑ったりする十二月です
妻と二人
おだやかに愉しく飲みたい十二月です