オノレ日記帳

2010年9月の記録



  詩人・長田弘
Date: 2010-09-27 (月)
 来年二月、『うたう麦 〜 語りの世界 〜』。
オノレと女優・森うたうちやんの二人で立ち上げる会じゃが、
この旗揚げ公演をきっかけに、
その先どない展開になっていくかはまだわからん。
まずは二人で語るアメリカインディアンの世界、
「今日は死ぬのにもってこいの日」(原作・ナンシー・ウッド)を、
『うたう麦』第一歩のスタートとして、
観ていただくお客さまにしっかりお届けしたい思うとる。
 この旗揚げ公演のゲストにお招きするんは蓮池龍三君。
米TV映画シリーズ「CSI科学捜査班」で、
オノレと共に吹替えをしとる声優仲間じゃ。
ほいで過去の独歩の舞台、「象」(別役実・作)で主演し、
「はるなつあきふゆ」にも出演してくれとる。
とにかく真面目を絵にかいたような、才能ある役者じゃ。
 以前の日記でもふれたが、
龍三君は最初、太宰治の作品を候補として提案してきよった。
が、いろいろ紆余曲折を経て、
結局、長田弘さんという詩人の作品を語ることになった。
「あのときかもしれない」ちゅう、
刻まれた詩の一行一行から、しみじみと風景が浮かんでくる、
まこと深い味わいのある詩じゃ !
 長田弘という詩人の名を、オノレはボンヤリ知っとったが、
実際にはその詩を読んだことはなかったけえ、
読んでみて、この人のもつ世界と思考にチト心が震えた。
 今回、長田弘の作品を紹介してくれたのはうたうちゃん。
(さすがじゃのう !)
 「あのときかもしれない」は、うたうちゃんが、
いずれ自分で語りたい作品としてあたためておいた詩じゃけえ、
龍三君、それに先んじて語ることのできる自分は果報者じゃと、
心して語ってくれんさいや !

  憂患・・・
Date: 2010-09-22 (水)
 尖閣諸島の領有権を巡る中で起きた、
中国漁船と海上保安庁・巡視船の衝突。
互いの面目をかけてか、日中間の緊張が高まっとる。
 割引郵便制度で偽の証明書が発行された郵便不正事件。
厚生労働省の村木元局長は無罪となり、検察は控訴を断念。
で、この事件担当の大阪地検特捜部の前田ちゅう主任検事は、
証拠として押収したフロッピーディスクを、
検察側に都合よく自ら改ざん。
(フロッピーディスクで「遊んでいてマチガエタ」だと !)
まったくトンデモナァーヤツと、オノレは怒り心頭・・・。
ほいでそのあと、鳥肌が立ったわい。
言論・表現自由の民主主義国家じゃいうてる日本でも、
己に都合よく、傍若無人に事件をでっち上げ、
無実の人をいつでも罪人にできる検察・国家権力が、
今、現実に存在しとるちゅうことじゃけえのう。
 国内外に、次々ドエリャーことが起こりよる。
発足したばかりの管新内閣、
さぞかし頭が痛うーてならんじゃろう。
何とか復活したちゅう高い内閣支持率なんざ、
一つ大きな難問で策を誤れば、たちまちダウンする砂上の楼閣・・・。
管サンよ、ユメユメ油断召されるな !
〈危急存亡の秋(とき)〉がずっと続いとるような日本社会。
心から安心して、
風にそよぐススキの原をのんびりと散策できる・・・、
そんな平穏の日々がはよ来てくれんかいの。

  体調不良・・・
Date: 2010-09-21 (火)
 ここ一週間、チト体調がよくなあー。
まず血圧が高うなって正常値に下がらん。
そのせいか頭がボーッとしとる感じが消えん。
いたしかたなく昨日から禁酒を断行したら効果テキメン。
たった一晩酒を抜いただけで、今朝の血圧は正常に戻った。
ほいでもしばらく禁酒を続けてみるわい。
 一昨日からは軽い胃痛に苦しんどる。
痛くなる前日に、食べ残しの鶏の肝を喰った。
どうもこれがイカンかったような気がする。
それでも痛みは軽く、散発的に襲ってくるていどじゃったけえ、
痛くなった日曜日のその日、拙宅に遊びに来よった友人たちと、
昼間からスキ焼して焼酎まで飲んでもうた。
結果、当然のごとく昨日も今日も痛みが治まらん。
とりあえずパンシロン飲んで、ほいでもアカンかったら、
明日は一週間前に受けた、
小金井市の無料健康診断の結果を聞きに病院へ行くけえ、
ついでに腹の具合を診てもらうわい。
 やれやれ・・・。

  新米の美味さ思うて・・・
Date: 2010-09-16 (木)
 雨・・・ありがたき雨 !
これまでの暑さが半端ではなかったけえ、
おかげで今日はおそろしく涼しい。
南向きの軒先にかけとる寒暖計は25℃。
35℃前後の毎日じゃったけえ、こりゃ涼しく感じるよのう。
 ほいでも秋雨というより、秋出水ちゅうような雨じゃから、
ありがたく思う地の人あれば、苦しむ地の人もおる・・・。
まこと天の差配は人智の及ぶところではなぁー。
 どうやら異常な「秋の猛暑」も終わりそうだが、
今年の新米は、はたしてどない出来なんじゃろか ?
チト気になるわい・・・。

新米の美味さ思うて食う古米   麦   人

  逸見庸「水の透視画法」
Date: 2010-09-15 (水)
 オノレのボンクラ予想は見事にはずれ、
管サンが民主党代表に選ばれ、小沢サンは敗れた。
正直、明日の総理にどちらがなったとしても、
オノレはあまり期待をもつことができんけえ、
別にバンザイもガックリもしとらんがな。
 ほいでも民主党サポーター票で、
およそ各地で管サンが勝利した要因を考えみると、
鳩山サンの軽井沢別荘での、あの風景が大きい要因とちがうか ?
「気合いじゃ、気合いじゃッー」と、
気勢ちゅうか、アホな奇声を上げよった小沢・鳩山グループの、
およそ庶民感覚と乖離したバカバカしいあのシーンじゃ。
あれが今回の代表選の帰趨を決する大きな要因となった・・・、
どうもオノレにはそがぁーに思える。
 さて、東京新聞の夕刊、隔週・火曜日に掲載される、
作家・逸見庸氏の「水の透視画法」。
オノレはこのエッセイをいつも愉しみに愛読しとる。
 この方の文章を初めて読んだのは、
「もの食う人々」ちゅう、
世界各地での食をルポしたドキュメント・エッセイ ?
様々な国や人種の食の暮しを自ら取材し食べて、
そこから透けて見えてきよる地球、社会や貧困などの姿などを、
実に鋭い視点で抉りとった見事なルポじゃ。
十数年前、オノレはこの本を夢中になって読んだ記憶がある。
 その逸見氏の昨夜の東京新聞掲載の「水の透視画法」。
七十六歳の元大工職人の老人が、
生活保護も断られ、木造平屋のボロアパートで、
熱中症で亡うなった事実をもとに、現政治家を淡々と戒めとる。
 このエッセイ後半に、逸見氏はこう書いた。

 老人が亡くなってから四日後だった。
国会議員らが百数十人も「研修」と称して軽井沢の緑陰にあつまった。
涼風で風邪などをひかぬよう上着をつけて、
よく冷えた地ビールやワインを飲み交わし、
「キアイダー、キアイダーッ !」とげびた声をあげて、
こぶしを宙につきあげたりした。
 議員たちは貧者のくらしに役だつなにを研修したというのだろう。
研修というのなら、
全員そろって軽井沢から死んだ老人の木造アパートにおもむき、
順ぐりにせんべい布団にあおむいてみて、
死んだ人の腹が三十九度の熱をたもっていた厳酷無比のわけを、
とくと探求すべきだった。

 管総理を頂点とする、国会の、地方の全ての議員サンたちよ。
この逸見氏のエッセイをよく読んで、
国税を使い成り立っとる己の政治活動を、チットは反省してくれや !!

  頭の理解と肉体表現
Date: 2010-09-14 (火)
 一人の役者が芝居の原作や脚本を熟読する。
彼は頁のめくりどころが手アカで変色するほど読込む。
そして作品の持つ世界を隅ずみまで理解し、
登場人物一人ひとりの役割を理解し、
もちろん己の役を理解する。
ほぼ完璧に理解する。
ところが、そこまで作品を読込み理解しながら、
役者としての彼の表現は、
そのすぐれた頭の理解と裏腹にままならぬ。
彼の頭の中の思いは、
彼の思ったとおりの肉体表現として具現化せず、
いつまでも空回りするばかり。
結局、散々な舞台のまま本番は終わってしまう・・・。
 活字の理解力にすぐれた役者が、
必ずよい表現をするとは限らないのだ。
それほど脚本を熟読せず、
己の役についても余りムツカシク考えず、
ただ素直に感じたままを演じている役者の表現が、
客観的に観て素晴らしかったりすることはままある。
実にこれが肉体表現のオソロシさであり、
モドカシさといえる。
 作品の理解や解釈は、人によって違ったりもするが、
それでもドラマには一つの筋道があり、
演出家のプランなどによって選択肢は絞れてくる。
しかし頭で理解した役や台詞を、
いかなる肉体表現によって具現化させるかの選択は、
最後は役者自身で選択するより術はない。
そしてこの表現の選択肢は、
いわば三百六十度の円の中に無数に散らばっているので、
何度のラインにあるモノを選択するかは、
川の中の砂金を掬い取るようにムツカシイセンタクなのだ。
 頭の理解と肉体表現の乖離・・・。
この乖離を埋めるに、
いつまでもオツム中心で悩んでいるような役者は、
砂金を発見するになかなか容易でなかろう。
とどのつまり一つでも多くの「砂金」を探しだすには、
己の感性に磨きをかけ、より敏感にし
もう厭になるほど、頭でなく、体そのものを使い、
何度も何度も「川にモグる」稽古を積み重ねる・・・。
これより他なかろうと、オノレはエラそうに考える。

  台詞覚え・・・
Date: 2010-09-12 (日)
 齢六十を過ぎてから、
芝居の台詞を覚える自信が滅法なくなり、
「はたしてこれだけの台詞を稽古までに覚えられるんかい ?」と、
恐怖感にかられる瞬間がままある。
 もはやオノレに一夜漬けのような覚え方はできんけえ、
数カ月とか半年かけ、じっくり台詞を頭に入れにゃしゃーない。
ほいで、暇さえあれば電車内であろうが、路上であろうが、
ブツブツ、ボソボソ、ああじゃ、こうじゃ・・・。
すれちがう人から不審な眼差しでよう見られる。
 この七年間、独歩の舞台でいろいろな役をし、
それも主に別役作品の、
実にややこしい台詞をたくさん覚えてきよったけえ、
たっぷり時間さえかければ、
台詞を頭にチャンと入れる自信はマダある。
ほいでも、オツムで探らずとも、
台詞がスラスラ口を突いて出てくる・・・そようになるまで、
常に台詞覚えの不安はつきまとうんじゃ。
 さて、来年二月に上演する、
『うたう麦 + 龍三 〜 語りの世界 〜』。
 森うたうとオノレの二人で語る上演作品は、
「今日は死ぬのにもってこいの日」。
 老インディアン夫婦の語る、
自然と共生する生命の悦びに満ちあふれた、
ほんまに透明・素朴な作品じゃ。
とはいえ、その語りの量は半端でなぁーし、覚えるに手強い。
「ひょっとして、もう頭に入らんのとちがうか ?」
ちゅう不安が、時々オノレを襲ってきよる。
この不安を克服し、このボケナスオツムに、
何がなんでも老インディアンの言葉を叩き込まにゃならん !
 今日もオノレは、車に跳ねられんよう気いつけながら、
ブツブツ、ボソボソ呟いて道を歩く・・・。

  観劇の連チャン
Date: 2010-09-11 (土)
 今日は久しぶりに観劇の連チャン。
昼は西川口の小劇場まで足を運んで、
チェーホフとゴーゴリの短編をもとに脚色したらしい、
「とある出来事」というタイトルの舞台。
キンダースペースちゅう劇団のアトリエ公演じゃが、
独歩の芝居に出演もし、スタッフとしても手伝ってくれた、
西村剛君が客演しとる。
 夜は新宿サザンシアターで青年劇場公演「島」。
広島で被爆した教師が主役の話しなんじゃが、
オノレはこの作品に、民藝に在籍していた二十代の頃、
邦夫ちゅう少年役で出演しとった。
独歩さよなら公演「父と暮せば」と同じく「島」も、
戦争と原爆によって苦しむ人たちを描いた佳作。
ま、「父と暮せば」が、
決して暗くない、親子の漫才みとうな日常的やりとりの中で、
重いテーマを深く描いとる一時間半の中編芝居だとすれば、
「島」は、被爆者の現実がより赤裸々。
ほいで登場人物もそれなり多く、三時間を超える長編芝居。
上演側の舞台創りがよほどしっかりしとらんと、
客は観るのにチトしんどい努力が必要になるかも・・・?
 民藝の「島」では、
きん役を演じた故・北林谷栄さんの凄まじい演技が、
未だオノレの瞼に焼きついとって消えんのじゃ。
ほんま、スゲエ女優じゃった !

  自然のリズム
Date: 2010-09-08 (水)
 台風のおかげで、ほんまに久しぶりの雨。
猛暑もひとまずおさまりホッと一息。
拙宅の小庭の樹木も雨に濡れ、
生き返ったように緑をキラキラさせシャキッとした。
 台風や大雨続きも困るが、
やはりほどほどに降る雨あってこその晴れ間・・・。
我々人のつくりたもうた文明社会は、
この「天の恵み」を、
正しく世界に循環させる知恵をもたにゃいけん。
自然のリズムを狂わせるような、
人に都合のええばかりの文明にいつまでものめり込んどると、
その恐ッとろしいシッペ返しを必ず受けるで・・・。
 このままでは、地球という星に明るい未来はなぁー !!

  佐渡ヶ島
Date: 2010-09-07 (火)
 来月はじめ、四日連続で仕事のなぁー日があるので、
この期間、仕事の問合せが来てもお断りし、
思い切って休みをとろうと決断した。
で、友人の声優とオノレ夫婦と三人、
佐渡ヶ島へ行くことにした。
三泊四日、オノレの車で久しぶりの遠出じゃ。
 さて、なぜ佐渡ヶ島か ?
これは友人の希望により決めたので。なぜかようわからん。
 とにかくオノレは船が苦手。友人もアカンちゅう。
ほいでも我々は、新潟から佐渡まで、
フェリーで「流され」る覚悟を決めた。
生まれて初めて渡る鬼・・・、うんにゃ、佐渡ヶ島。
笑われようと、バカにされようと、
一攫千金、手掘りで「金山」を掘ってみるか !

  文明は何処へ行く・・・ ? !
Date: 2010-09-06 (月)
 歴史に残る記録的猛暑 !
果たして秋はくるんかい・・・。
こない冷房漬けの毎日を過ごしとって、
体にええはずないんじゃろが、
それでも冷房なしでこの異常な暑さは凌げん。
ほいでまた「地球温度」を上げてしまう悪循環・・・。
 土の、樹木の、そよ風の、
自然のありがたさをつくづくと思う。
 果たして文明は何処へ行く・・・ ? !

  共同記者会見&公開討論会・・・
Date: 2010-09-03 (金)
 先日、管サンと小沢サンの共同記者会見、
昨日は公開討論会をテレビで見た。
次の民主党代表&総理大臣にどちらがふさわしいのか ?
所詮オノレに投票権はなあし、
何よりここ一年の民主党政権のひどい迷走ぶりを見せられては、
もはやどちらがなったとしても余り大きな期待はもてんわい。
 ほいでもせっかくじゃけえ、
あえて二人の記者会見をオノレなりに採点すれば、
60点と40点で小沢サンに軍配が上がるかな ?
メディアの世論調査では、圧倒的に管さんがええようじゃが、
残された十日間で逆になる目もあるで・・・。
 ま、当てにならんオノレのカンでは、たぶん管サンが負けよる。
ほいで、もし小沢サンが総理になったところで、
政治の混迷・混乱はとうぶん続き、我々下々の民にとって、
明るい展望の持てる社会は当分来ないんとちがうか・・・。
「ああッ !!」

  『うたう麦 + 龍三 〜 語りの世界 〜』の打ち合わせ。
Date: 2010-09-02 (木)
 昨夜は吉祥寺の居酒屋で、
オノレと森うたう、そして蓮池龍三の三人で、
来年二月、武蔵野芸能劇場で上演する、
『うたう麦 + 龍三 〜 語りの世界 〜』の打ち合わせ。
 諸々制作的打ち合わせをしながら大いに飲んだ。
(うたうちゃんは下戸じゃけえウーロン茶)
 お二人とも「芝居の虫」を絵に描いたような役者じゃけえ、
打ち合わせを終えてからは、互いに芝居創りの話に熱が入り、
大いに有意義で愉しい時間を過ごしたわい。
 龍三君は、太宰治の「トカトントン」ちゅう作品を語る。
大いに期待してやってくれんさい !

  力演 !
Date: 2010-09-01 (水)
 オノレの舞台を観てくれたお客さまに、
「力演でしたね !」といわれると、今はなぜかチト恥ずかしい。
〈力演〉ちゅうんは、
文字通り力いっぱい演技したことをいうんじゃろうから、
こように評価されるのは決して悪いことでもなぁー。
役者は誰でも舞台に立てば、自分精一杯の演技をするんじゃけえの。
ほいでも〈力演〉じゃった言われると、
オノレには、オノレの演技が力みっぱなしではなかったんかいと、
そようにお客様には見えとるんじゃなぁーかと冷汗が出てくる。
まあ実際、力まにゃ形象できん役どころもあるで、
そような演技も全否定はできん。
ほいでも今オノレは、
基本的に力みっぱなしの演技は余りしたくなぁーし避けたい。
〈熱演でしたね !〉も、力演同様、若い頃は言われて嬉しかったが、
最近はやはりなぜか微妙に恥ずかしくなるわい。
 オノレはここ数年、稽古期間の終盤までは、
目一杯の六、七分の力で、
役の表現をするよう意識し心がけて役創りをしとる。
(心がけてはいても、これがなかなか・・・、
思ったようにはいかんのが本音じゃが)
 とにかく目一杯力んで稽古をしとっては、
自身の演技の姿を俯瞰でとらえられず、
どうしても一本道ばかりを突っ走る稽古になってしまう。
いくつもの表現の道を探求し、よりよい選択をする役創りは、
まずオノレの中にある〈力み〉をなくすところから始まる。
(ほいじゃけえ、稽古に入る前の準備を怠けてはアカンのじゃ !)