オノレ日記帳

2010年10月の記録



  ああ・・・デジタル社会 !
Date: 2010-10-31 (日)
 今やデジタル抜きにしてこの文明社会は成り立たんのか ?
アナログ社会は窒息寸前・・・?
とにかくオノレのごとき全く数字に弱いロートルまで、
四苦八苦しつつも何とかパソコンを苦死・・・、いや駆使して、
かようなブログを掲載しとる。
 しかしこのデジタル環境によって生じるストレスも半端ではない。
時によっては恐怖さえ感じることがある。
例えば突然パソコンがフリーズしたりすると、
オノレのオツムはパニックで一気に血圧上昇じゃ。
つい最近、突然路上で車が動かなくなり、
前面のパネルに意味のわからん絵文字のランプが点滅しよった・・・。
幸い大事に至らんかったが、これは大変な恐怖じゃった !
 DVD・携帯電話・etc・・・、
もはやこれらの機器なくして、我々の日々の暮らしは成り立たん。
オノレの仕事も成り立たん。
そのデジタル機器が突然故障し、
その対処の仕方に右往左往する日常は、ホンマにいらつき、
何だかゼツボー的気分になったりもする。
これはまさに現代病そのものかもしれん !
 オノレは可能ならこのデジタル社会とオサラバし、
そのストレスと呪縛から逃れたい思うとる。
が、声優業をしとる限り、役者としての表現活動をしとる限り、
もはや逃げることも避けることもできんのが現実・・・。
青息吐息、何とかデジタル社会についていくよりしゃーない !

  アイのオモタサ・・・
Date: 2010-10-30 (土)
 ヤマノカミと、テレビのニュース番組の中で、
「お弁当」を作る家族が増えているちゅうのを観た。
で、何か感じることがあったんだろうか、
今朝、何年振りかでオノレに「愛妻弁当 ?」を持たせてくれた。
ただしオカズもメシも昨夜の残りもの・・・。
 午後一時過ぎに仕事が終わり、
オノレはスタジオ・ロビーでこの弁当を食ったわけだが、
「残飯弁当」でもなかなかおいしく食うことができた。
オノレはヤマノカミのアイを噛みしめつつ、
余り好きではないピーマンまできれいに平らげちまった。
とにかく「残飯弁当」は、外食よりは経済的だし、
夫婦の絆も深まり一石二鳥か・・・?
 カバンがギュウ詰めになって重くなるのはチト辛いが、
これもヤマノカミの「アイのオモタサ」だと思って、
我慢致しますです・・・ハイ。

  長坂まで・・・
Date: 2010-10-24 (日)
 今日は、山梨・長坂に住んどる友人の役者、
黒田利夫さんのご自宅を訪ね一泊させて頂いてくる。
八ヶ岳や甲斐駒ケ岳に囲まれ、まさに自然のあふれたところ。
黒ちゃんは数年前、立川からこの地に移り、
「悠々自適 の年金生活 ? 」で、
朗読の会に出演したり、舞台に出演もしたり・・・と、
人生の終盤 ? 、まッこと羨ましいマイペースの日々。
 そもそも今年解散した独歩のスタートは、
オノレと黒ちゃんと、
大先輩の役者・岡部政明さんの三人で企画・制作した、
「小さな家と五人の紳士」(作・別役実)からじゃった。
以来、残念ながら黒ちゃんは、
独歩の芝居に出演はしとらんが、人望の厚さと、
器用で得難いその力を何かと貸していただき、
ずっと肝胆相照らすお付き合いをさせてもろうてる。
 一応今回の訪問も、
来年の『うたう麦 〜 語りの世界 〜』公演で、
腰掛にする丸木を頂戴するため・・・ちゅう名目だが、
実は何より、オノレが大好きな黒ちゃんと、
いろいろ「語り」あいたくてお邪魔する。
 へへ、今宵、愉しい晩餐をキタイシトリマス・・・ !

  イメージ力
Date: 2010-10-23 (土)
 役者が人間を表現するということは、
オツムの中で描く、そのイメージの具象化ということだよな。
 芝居の台本に書かれた台詞やト書は、
あくまで活字でしかないわけだが、
その活字には、いろいろな社会状況、いろいろな風土や風景、
いろいろな人間感情がこめられとる。
それをいかに深く豊かに感受し、理解し、イメージするかで、
役者の表現は、おそろしいほど浅くも深くもなったりする。
 役者は、優れた劇作家の書く台詞やト書きの活字によって、
己のイメージ力、創造力の深度を常に試されとるんだ・・・ !

  新・声優プロダクション 《ベストポジション》
Date: 2010-10-22 (金)
 11月からスタートする新しい声優プロダクション、
《ベストポジション》。
オノレはこの新事務所に所属することとなり、
声優マネジメントをお任せすることにした。
今日はここに所属する声優のボイスサンプルを収録する。
 マネージャー・一人、所属声優・五人ほどの小所帯。
経営を軌道に乗せるのは大変じゃろ。
ホンマ、今の厳しいご時世、並みの努力では生き延びられん。
オノレも戦力の一人としてお役に立てるよう、新たな気持ちで、
これまで以上にチャンとした仕事をせにゃいけん。
 マネージャー&代表は、まだ三十代半ばの若者。
失うべきものは何もないところからのスタートじゃ。
何ごとにもおそれずに挑戦し、
持てる若きバイタリティーを大いに発揮してもらいたい。
リーダーとして、何より人の和を大切にし、驕りを戒め、
謙譲の心と、愛される笑顔を忘れずにいてもらいたい。
努々、〈裸の王様〉になってはいかん・・・。
 まさに《ベスト》なプロダクションになりますように !

  晩秋・・・
Date: 2010-10-21 (木)
夜が長くなってきた。
この夏の猛暑が嘘のように肌寒い。
首筋に絡まる小糠雨。
もはや晩秋。
秋晴れに色めく紅葉を見たい。
冬を招く枯れ葉になるまえの、
命の輝きを見たい・・・。

  己との闘い・・・・
Date: 2010-10-20 (水)
 どのような職業であろうが、
人生はまず己との闘いが根っこだと思う。
一つの仕事を多くの人間関係で成し遂げるにしても、
己の未熟、無知、短所との闘いなくして、
一枚岩のチームワークやアンサンブルは生まれん。
 オノレごとき怠惰大好き人間は、
若き頃、この闘いを回避することばかり考えて生きとったので、
あげく役者として自己を磨くに、チト遅きに失した自覚がある。
その悔いと自戒の中で、五十を過ぎたころから、
人並みくらいには、しんどい己との闘いをするようにはなった。
オノレの怠惰を認め、無能を無能として認め、
こいつと闘うユウキを、チッとはもてるようにもなった。
で、この闘いの延長線上にこそ、
多くの仲間と芝居創りをして生まれる成果への歓び、
役者として精一杯の力を発揮し、
それなり人間を表現できたときの悦びがあるのだと、
オノレのボケナスオツムも、だいぶわかるようになった。
 この先も、現役の一表現者として生きる限り、
オノレは己との闘いを放棄しないつもりではいるが・・・、
正直、ラクじゃねぇーよなぁーッ !

  テーマはあっても・・・。
Date: 2010-10-19 (火)
 ここ一週間で五つの劇場へ足を運び芝居を観た。
で、チト疲れた・・・。疲れる舞台が多かった。
ま、それぞれの作品には、
それぞれなりのテーマはあったんだろうとは思う。
しかしそのせっかくのテーマが、面白い人間ドラマとして、
チャンと客席に届かねば看板倒れ・・・。
とにかく重たかっり、煩かったり、かったるかったり。
総じて脚本と演出の弱さが目立ち、
オノレとしては役者が気の毒になってしまう。
 中では今日観た民藝の「どろんどろん」。
鶴屋南北「四谷怪談」の仕掛けを作る大道具の裏方話しだが、
手練の劇作家・小幡欣治さんの脚本はそれなり巧みで、
久しぶりに肩が凝らずに観ることはできた。
 尾上菊五郎役の稲垣隆史さん、ホンマに絶品の演技 !
そのうち一杯飲みましょう。

  我が箴言 ?
Date: 2010-10-17 (日)
 ヤマノカミが古いファイルを整理しとったら、
ずいぶん昔(15年以上前 ?)にオノレが考えた、
箴言(しんげん)のような、
というより譫言(せんげん)のようなメモが出てきた。
あの頃、オノレはこがいなことを思っとたんかい・・・と、
チト気恥ずかしさをおぼえつつ、何だか笑ってしまった。
そのいくつかを公開すると・・・。

人は生きるために働くだけではない。
死ぬためにも働くのだ。

落魄者の臨終の言葉。
「これで皆と平等になれる・・・。」

宇宙遊泳の映像を見て彼は言った。
「あの空間は、やはり死んでから逝くところだ。」

自殺者は信じている。
幸福になる秘訣は、世の中から消えることだと・・・。

巧みを意識すると嘘になる。
素直を意識すると下手になる。

人が仕込む動物の芸。
人から盗む人の芸。

 まだたくさんあるのだが、
だんだん気恥ずかしさが増してきたので、
今日はこのくらいで・・・。

  台詞を 「入れる」。
Date: 2010-10-16 (土)
「台詞入った ?」
「なかなか入らん !」
 我々役者仲間ではしょっちゅう交される会話。
そう、役者は台詞を「覚える」というより、
「入れる」というほうが、どうもピンとくる。
 役者は台詞をただ暗記するだけではうまく語れん。
劇のシチュエーション、役の個性、
一つ一つの台詞のつながりと内容、
それら諸々を可能な限り理解したうえで語ろうと努力する。
つまり台詞を入れる期間や時間なんざ、
予定を組んでそのとおりにうまくいくものではない。
一つの長台詞を頭に入れ、考えずとも言えるようになるのに、
一週間もかかることがあれば、一日で入ってしまう場合もある。
いずれにせよ、なかなかオツムに入らん台詞ちゅうのは、
おおむね、その台詞に対する、
オノレ自身の理解力不足によることが多いんだよな。
 台詞は「覚える」作業ではなく、
語る一つ一つの内容を理解しつつ「入れる」ものであり、
それを肉声化する創造の第一歩だ。 

  チリ・落盤事故
Date: 2010-10-14 (木)
 南米チリの落盤事故で、
地下約700メートルに閉じ込められた33人の方々。
その救出がいよいよ始まり、
今朝七時の段階で既に26人が地上に生還した。
二ヶ月をこえる地下でのサバイバル暮しを克服し、
地上に生還した人々のドラマをテレビで見て、
胸を熱くせん人はまずあるまい。
改めてオノレは、人のもつ団結や友情、愛や信頼の力、
命あることの尊さ、素晴らしさをつくづくと感じる。
 こんな素晴らしい資質を有する人間が、
一方では銃をもって戦い、無残に殺し合い、
核兵器の所有を誇示するかのようにして脅し合う。
まるで乖離した、この人類裏腹の資質を、
我々はいったいどう理解すればよいのだろう !!

  ささやかな規模であっても・・・
Date: 2010-10-13 (水)
 多少ひがみ根性がないでもない。
が、生涯シェイクスピアを知らないで人生を終える人は、
世界中にごまんといるだろう。
近松も南北も、残念だが井上ひさしさんも、
生涯知らずにあの世へ逝く日本人だってぎょうさんいる。
であるからして、解散した我が独歩の芝居を観た人の数が、
この東京の人口と比し、
計算するのがアホらしくなるほどわずかであっても、
そんなにガックリすることではあるまい ?
 文学・音楽・絵画・映画・演劇・・・。
人は誰でもそれぞれに、
生涯忘れえぬ芸術や文化と出会い、影響されて生きる。
もしかような出会いを一生持たぬ人がいるとすれば、
本人が不幸と感じるかどうかはさておき、
やはり不幸なのではないか ?
 さて、独歩のこれまでの舞台を観た方の中に、
何らかのよい影響や刺激を受けた方が、
一人でも二人でもいてくれたとすれば、
オノレにとってこれにまさる歓びはない。
この歓びを得んがため、
オノレは芝居をしているといってもよいかもしれん。
だから例えささやかな規模であろうと、
オノレはこの肉体が許す限り、
己精一杯の表現活動を続けたいと思っとる !

  出口なし・・・
Date: 2010-10-12 (火)
 来年二月『うたう麦』、
語り公演のゲストは蓮池龍三君。
その彼が語るのは長田弘さんという方の詩で、
「あのときかもしれない」。
この作品の世界については、是非舞台をごらん頂き、
その詩の素晴らしさを感じとって頂きたい。
 『うたう麦』が長田さんを取り上げると決めてから、
オノレは出版されている長田さんの本を十冊ばかり購入。
昨夜はその「長田弘詩集」(ハルキ文庫)を、床に入って読んだ。
 詩集の中の一編。
この詩はなぜか英語で書かれた詩で、
詩人の谷川俊太郎さんが日本語訳をし、
その両方を並べて掲載しとる。

  パソグラフィー

長田弘 詩人一匹
しゃれた詩を書く  月曜日
しゃかりき推敲   火曜日
いきなり消します  水曜日
白紙をみつめて   木曜日
むっつり無口な   金曜日
なんにも書けない  土曜日
どうどうめぐりの   日曜日
出口なし
長田弘 詩人一匹

 詩人のかような一週間は、
芝居の役創りにとりくむ、オノレのような役者の一週間でもある。
ひょっとすると人生なんぞというものは、
こんな一週間の繰り返しで終わるのかもしれん。
「出口なし」ばかりでは困るけど・・・。

  金木犀の匂いの中で・・・
Date: 2010-10-09 (土)
 あちらこちらで金木犀のええ匂いが漂っとる。
オノレはこの匂いが大好きじゃけえ、
鼻水を啜るように、何度も繰り返しススッて陶酔しとる。
 佐渡から帰った翌日、
拙宅の小庭の槿が、七輪ばかりの白い花をやっと開いた。
開花の時期がチト遅いような気もするんじゃが・・・。
だとすれば、やはりこれは猛暑の影響じゃろか ?
 来年二月に立ち上げる『うたう麦』の上演作品、
「今日は死ぬのにもってこいの日」の前半部分が、
どうやらオツムの中におさまったような気がする。
およそ一月半もかかっとるが、オノレにしては早いペース。
何とか十一月中には、後半部分もオツムの中にタタキコミたい。
共演する森うたうちゃんも、オノレとほぼ同じペースらしい。
二人の息は、今からピッタリじゃのう !

  佐渡の旅
Date: 2010-10-08 (金)
 先週から今週にかけて、三泊四日、新潟県・佐渡の旅。
心身とも、大いにリフレッシュできたわい。
その風土、出会った方々の人柄、食った料理と酒の美味さ。
オノレの予想以上にオノレ好みの島じゃった。
なかでも〈宿根木〉という集落の、
狭い路地の入り組んだ家並みの風情が心に残る。
旅三日目に大雨に見舞われたが、
その日以外は天候にも恵まれ、往復の船旅はまこと穏やか。
往きは酔い止めを飲んで乗船したんじゃが、杞憂じゃったのう・・・。
 帰宅したら郵便受けは満杯。
あちこちから芝居のご案内が届いとった。
皆さん頑張っとるが、これをすべて観るのはタイヘンじゃ !

  明日から佐渡ヶ島 !
Date: 2010-10-01 (金)
 十月に入った。
あと三カ月もすれば今年も終わる。
〈光陰矢のごとし〉・・・。
新聞の死亡欄に目をやれば、
六十代、七十代の方々が、次々この世とオサラバしていきよる。
またオノレの知り合いもポツリポツリと・・・。
 毎日のようにその現実を目の当たりにしとれば、
自分の寿命もすでに秒読みに入っていると思わざるをえん・・・。
ほいでもそがぁーなことばかり、
ネガティブに考えておっては、ますます寿命を短くする。
「なるようにしかならん」と、あくまでポジティブな思考で、
一年一年の創造的生き方を模索し、生み出すことが肝要じゃ。
 来年二月には、『うたう麦 〜 語りの世界 〜』の公演があり、
十月には〈unit●HIROSHIMA〉ちゅう座組みで、
再び『父と暮せば』(作・井上ひさし)を上演することが決まった !
 今年の独歩さよなら公演『父と暮せば』で、
演出助手と娘の代役を立派に果たした女優・鈴木翔子が、
どないしても、その娘・美津江を自分で演じたいちゅう、
熱く深い想いが実を結び、井上事務所さんから上演許可を頂戴した !
〈unit●HIROSHIMA〉は、この翔子ちゃんとオノレが、
『父と暮せば』上演のためだけに立ち上げた、
ま、とりあえず一期一会のユニットちゅうわけ。
 もはや寿命がどうのこうのというとれんわい。
来年の二つの大きな舞台に向けて、またエネルギー全開じゃ。
ほいでそのエネルギーを満タンにするため、
明日から四日間、頭を空ッポにして佐渡ヶ島へ行ってくる !!